衣装とヘアスタイルが役づくりに与える影響
―――先ほど三浦さんがおっしゃったように、“L”のアジトは一見きらびやかで、彼女たちの好きなものが散りばめられているのだけれども、常に儚さが付きまとっている。そうした両義性は、エマの衣装やヘアスタイルにも表れていると思いました。具体的には、エマはオレンジに髪を染めていますが、根元がプリンになっていて、入念にケアされているのか、そうじゃないのか、判然としないところがあります。一方のウミンは、丈の長いグレーのジャケットがトレードマークです。お2人にとって今回、衣装やヘアスタイルは、役づくりにあたってどのような影響を与えましたか?
三浦「毎回、作品に参加させていただくたびに思うんですけど、文字ではなくビジュアルで役に関する情報を得られる最初の機会が衣装合わせなので、役づくりに与える影響はとても大きいです。身に着けるもの、手に取るものでキャラクターの性格が見えてくることもあります。
今回、脚本を読ませていただいた時点では、隔離された、豊かでない場所として“奈落”をイメージしていたのもあって、ご提案いただいたエマの服装が、お洒落を楽しむ余裕がある装いだったので、意外ではあったんです。
先ほどのエマの髪の毛は手入れされてるのか? されていないのか? という話に通じると思うんですけど、お金がなくても出来る範囲で自分の好きなものをかき集めたり、『これ絶対髪痛むよね?』みたいな方法で髪の毛を染めたりする。それは若い時期特有の情熱がなせる業だと思うんです。“L ”はそうした情熱を濃縮したような場所なんだろうなって思った時に、“奈落”への理解が深まっていった感じがしました。最初に思い描いたステレオタイプなイメージではなくて、一歩踏み込んだリアルを表現する上で、とても重要なきっかけでした」
―――お話を伺って、エマというキャラクターをより深く理解できた気がします。一方のウミンはほとんど衣装が変わりませんよね。
寛一郎「そうですね。2ポーズくらいです(笑)。衣装合わせで最初に着させていただいた試作の衣装が「高級ブランドのファッションショーか!」っていうぐらいのロングコートで、「ちょっと違うかもしれませんね」となって(笑)。そこから丸山健志監督のイメージとすり合わせて、完成に近づけていきました。
衣装のパターンが少ないというのは、エマを始めとした“L”のメンバーがお洒落に気を遣う一方で、ウミンの関心はそこにはないというのがよく出ていますよね」