映画『35年目のラブレター』考察&評価レビュー。笑福亭鶴瓶の演技が最高…泣けて笑えるだけじゃない魅力とは?【ネタバレ】

text by 小林久乃

笑福亭鶴瓶演じる主人公は、戦時中貧しい生活を生き抜き、いよいよ定年退職を間近に迎える…。そんな中、原田知世が演じる愛する妻に恋文を送るべく、文字の勉強に奮闘する物語、映画『35年目のラブレター』が公開中だ。作品の魅力に迫るレビューをお届けする。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:小林久乃】

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報はこちら

笑福亭鶴瓶演じる主人公が教えてくれること

笑福亭鶴瓶
笑福亭鶴瓶【Getty Images】

 上映中の映画『35年目のラブレター』を鑑賞した。とある夫婦を描いた、ノンフィクション作品のまずはあらすじを紹介したい。

“西畑保(笑福亭鶴瓶/重岡大毅)は、長年勤めた寿司屋の定年退職を間近に控えていた。引退後、何をしようかと迷っているときに偶然目にしたのが『中学校夜間学級』。戦時中に生まれ、貧しい家庭で育った保は、読み書きができないことにずっと引け目を感じていた。愛する妻・皎子(きょうこ/原田知世/上白石萌音)に、自分の引け目によって負担をかけてしまったというストレス。できればストレスを払拭して、妻に人生で初めてのラブレターを書きたい。そんな衝動にかられた保は、中学校入学を決意する。もちろん応援する妻。ただ仲睦まじい夫婦の背後にも、老いと病が近づく”

 作品を通して気になった見どころはいくつかある。まず讃えたいのは保の行動力だ。64歳から幼児の孫と同じような勉強をするのは、努力と体力が必要。加えて、学校でさまざまな年代に囲まれて学ぶ、ジェネレーションギャップは、やはり自尊心をつつかれることになってしまう。それでも「妻に手紙を書く」という目標が彼を奮い立たせた。多くの成功者たちが必ず目標を定めると、一気に強くなれるということをよく聞くが、この理論は正解だったようだ。

 そして保の姿勢は日本のシニア世代に対しても、ハッとさせられるものもある。彼らの昨今の課題としてセカンドキャリアをスタートさせるのか、資産で生活をしていくのか、大きく2択が用意されている。いずれも年齢や不安を理由にして、弱腰になる面々が多く、課題はなかなか終了をしない。この第一歩にあたる行動力を保はスクリーンを通して、教えてくれている。

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