「今現在、最も変化が起きていると感じる」タイ映画

暉峻創三 写真:武馬怜子
暉峻創三 写真:武馬怜子

――2016年の大阪アジアン映画祭で香港の若手監督によるアンソロジー作品『十年』が、インターナショナル・プレミア上映されました。「雨傘革命」から10年後の近未来を舞台にした『十年』から現在の香港映画の潮目が変わったとされています。

暉峻「『十年』の製作者たちは当時まだ香港映画業界の外にいるような立ち位置でした。映画祭で上映するためにどこに連絡すれば作品にたどり着けるのか全くわからず、ラインナップ発表ギリギリで上映が決まりました。

香港の10年後を予測して描くという内容ですが、それぞれの監督の予想が流石に暗すぎ、誇張しすぎではないかと最初は思いました。しかし実際の香港は現在までその予想を上回る勢いで激動の時代を迎えていきます」

――香港映画は必ず大きな変化から新しい潮流が生まれるという歴史があります。

暉峻「そうですね。香港が東洋のハリウッドになった根源を探れば、1930年代の中国に辿り着きます。当時は上海が映画の都でした。政治的混乱を逃れた上海の映画人が香港に集まり、それで偶然にも香港が映画の都になった経緯があります。香港は常に時代の流れの影響を受けているわけです。

一方、今現在、最も変化が起きていると感じるのはタイ映画です。すごい勢いで変わっています。クオリティの平均値が高く、タイ映画ファンが年を追うごとごとに増えているのもそのためです。モンゴル映画やカザフスタン映画同様に、これまでのイメージを打ち破る作品がどんどん出てきています。

昨年からタイの政府側も新しい時代に入り、政策としてソフトパワーの重要性を明確に打ち出すようになりました。そこには映画が含まれ、政府のサポートが手厚いです。それも相まって大阪アジアンでは、昨年に引き続き2年連続でタイ映画特集を組みました。かなり反響がいいです」

――ホットな話題だと、先日、タイのテレビドラマ史上初の日本人俳優として向井康二さんがタイBLドラマに主演することが情報解禁され、大きな話題になりました。先駆けて、ディーン・フジオカさんが日本人俳優として初めて「アジア・フィルム・アワード」アンバサダーに選ばれ、日本人俳優が広くアジア世界に向いている活動が活性化されています。国内市場にとらわれない日本人俳優のアジアへの眼差しをどう感じますか?

暉峻「単純に日本映画が別世界として語られる時代ではありません。香港に俳優活動の一つのルーツがあるディーン・フジオカさんは国境を超えてアジアの映画人とも積極的に繋がる代表的存在であり、沖縄ベースで活躍する尚玄さんもフィリピン映画で活躍しています」

――その上でアジアの中の現行日本映画として必要なものは?

暉峻「やはり俳優であれスタッフであれ、日本だけを見るのではなく、ボーダーレスな作品を志向することです。そこから面白い映画が出てくる確率はある気がします。CGやサウンド・デザインなど、日本映画よりも遥かに進んでいる国もあります。日本映画はポスプロも日本で完結させることがほとんどですが、今日のアジア映画ではポスプロの一部をタイや韓国などで行う作品が最近少しずつ増えています」

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