広瀬すず、杉咲花、清原果耶が織りなす贅沢な時間とは? 映画『片思い世界』評価&考察レビュー。『ファーストキス』との共通点も

text by ばやし

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める映画『片思い世界』が大ヒット公開中だ。本作は、『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督と脚本家・坂元裕二が再タッグを組み、東京の古民家で暮らす3人の切実な片思いを描く。今回は、そんな本作のレビューをお届けする。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:ばやし】

ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。

3人それぞれの片思い

映画『片思い世界』
©2025『片思い世界』製作委員会

「片思いをしているときがいちばん楽しい」と話す人がいる。それはきっと、想いが実るかどうか白黒はっきりしないまま、一喜一憂することができるからだろう。届くか届かないかわからないからこそ、想像の余地はいくらでも広がっていく。

 ただ、もし絶対に成就することのない「片思い」があるとしたらどうだろうか。それでも、一方的に誰かに想いを募らせる時間を、楽しいと感じることができるだろうか。

 映画『片思い世界』は、誰にも干渉されることなく現実の世界で暮らす3人が、それぞれ異なる感情に包まれた「片思い」を抱えながら、身を寄せ合って日常を過ごす物語だ。

 会社でパソコンを前に仕事をする美咲(広瀬すず)。大学で量子力学の授業を受ける優花(杉咲花)。水族館でアルバイト作業に勤しむさくら(清原果耶)。

 家族でもなく、同い年でもない3人だが、12年もの年月をともに暮らしている。同じ家から出発して、同じ家に帰ってくる。彼女たちの日常に流れる醸成された空気感は、3人で過ごしてきたかけがえのない時間をひしひしと感じさせた。

 1人が悲しんでいたら、残りの2人が慰める。1人が怒っていたら、残りの2人が宥める。そうやって育まれてきた3人の連帯は、美咲がバスで見かけるといつも目で追ってしまう寝癖頭の男性・典真(横浜流星)への想いをきっかけにして、ほんの少しだけ揺れ動いていく。

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