3人を結ぶある秘密
美咲、優花、さくらを繋ぎ合わせる特別な絆。映画を観ている人は次第に3人を固く結んでいる、とある“秘密”に気づくはずだ。彼女たちの過去に起きた出来事と、そんな3人を取り巻く不思議な環境に。
今作の脚本を担当したのは、異例のロングランを記録した映画『花束みたいな恋をした』(2021)や、現在も多方面で話題をさらっている映画『ファーストキス 1ST KISS』(2025)を手がけた坂元裕二。
本作は『ファーストキス 1ST KISS』よりも先に、物語の着想があったという。今年、公開されたふたつの作品は、ロー・ファンタジー(現実世界にファンタジー要素を取り入れた物語)にはつきものである細かい法則や条件に、登場人物たちが縛られていないところが共通している。
その世界のルールに順応しながらも、自分たちの感情や意思を優先する。それはきっと「そういうもの」だと思っていたほうが楽だからだ。もっと言えば、想像だにしない世界のルールよりも、目の前の現実のほうが切実だからとも言える。
しかし、ふとした瞬間に彼女たちの前に理不尽が顔を覗かせる。大切な想いを届けたいと思ったときにどうしても越えられない隔たりがあったり、勇気を振り絞った告白でさえも、なんの気ない声かけに遮られてしまったり。
坂元裕二が描く3人の日常が尊ければ尊いほど、彼女たちが現実との隔たりに出会ったときに見せるやるせない表情が、脳裏に浮かんで離れなかった。