12年間の成長を記録した古い一軒家
この作品が帯びているファンタジー性。初めは驚くかもしれないが、観ているうちにだんだん慣れてくる。なぜなら、彼女たちはお腹が空いたらご飯を食べて、腹が立つことがあったら声を大にして叫ぶからだ。なんてことない日常を感情の赴くままに過ごしている。
そんな3人の関係性を視覚的に訴えかけるのが、彼女たちが暮らす思い出に溢れた空間。昔は画廊が住んでいたという古い一軒家には、3人のパーソナルな一面が見え隠れするアートワークや色彩が隅々まで敷き詰められている。
彼女たちが住む部屋だって、最初からあれほど手触りのある空間ではなかったはずだ。あれやこれやとお気に入りのものを集めながら、自分たちが日々を過ごす空間を彩っていく。みんなで空っぽを埋めていくその時間が愛おしくないはずがない。
どれだけ忙しい朝の時間でも3人で身長を測り合うのは、「あのとき」から時間が止まったままではないと信じたかったからではないか。部屋のあちこちに置かれたランプは、幼いころ暗がりが怖かった名残かもしれない。
あれこれと想いを巡らせたくなる余白が、彼女たちの12年間にはあった。そして、それぞれが成長していく軌跡が刻まれているあの家は、描かれることのない余白の時間を鮮やかに彩るためのパレットのようだった。