憑依されたアクションシーンを見事にこなす髙石あかり
セリフだけならまだマシかもしれない。本作のキモはハイスピードで展開する超絶アクション。殺し屋の工藤を演じる三元雅芸はスタントマン出身で世界レベルのアクション能力の持ち主。憑依されて一体化しているということは、彼と同レベルの動きが求められるわけで、これも簡単なことではない。
しかし、髙石あかりはそのすべてを乗り越える。よく「憑依型の女優」という言い方をするが、それはまさに本作の彼女のこと。どこにでもいそうな、ちょいダメ女子大生と、底冷えのする眼差しで殺気のある蹴りを繰り出す殺し屋をナチュラルに同居させ、圧倒的な説得力を生み出している。
映画の構成上、序盤の説明パートはどうしてもモタついてしまうのだが、バーで大暴れした後始末に、工藤の同僚だった殺し屋の影原を呼び寄せるあたりから、ようやく物語がドライブしはじめる。
工藤と影原は、ある犯罪組織で「犬」と呼ばれる殺し屋であり、その「飼い主」との微妙な関係が明らかになる。そして、霊とはいえ粛清した工藤が存在していることが組織に伝わり、そこに関わっているふみかにもヒットマンが忍び寄る。工藤を殺したのは誰なのか。ふみかは生き延びて、工藤の恨みを晴らし、成仏させることができるのか…。
映画の後半はバイオレンスレベルとアクション濃度がグンとアップ。組織のボスがバラモン兄弟のようなボーリング攻撃でリンチしていたり、日本統一を目指す、有名な組の方々もサプライズ登場するなど思わずニヤリとする場面もあるが、そのユルさを一瞬で忘れるほどのブルータルな描写が続き、本気の殺し合いが展開していく。