あえて描かれた「都合がよすぎる」設定
まずは、物語のあらすじを紹介したい。主人公の美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)は、幼少期に突然命を奪われてしまうが、この世に居続けているいわば「幽霊」と呼ばれる存在だ。本作では、そんな3人の不思議でささやかな生活が描かれる。
彼女たちの生活は、生きている人間たちとなんら変わりがない。3人の肉体は成長しているし、洋服を着て、学校や会社に通い、スーパーで買い物をし、飲み会に参加までしている。しかし、ルールとして、生きている人間からは3人の姿は見えないし、3人もまた生きている人間に干渉することはできない。
このちぐはぐさは、SF好きから見れば実に「都合が良すぎる」設定だろう。なんで進学、就職してるの? 飲み会参加できてるの? たしかに物語の描かれ方に違和感を覚えるシーンはいくつかあった。
しかし、この都合の良さは「あえて」なのだと感じる。
私は、この『片思い世界』は「誰かの想像の物語」なのだと感じている。
冒頭で引用した小鳥遊の言葉を借りるのであれば、
「亡くなった人を不幸だと思ってはならない」
という想い。そしてそれは冒頭でも述べたように坂元裕二が一貫して我々に伝えているメッセージでもある。