生きている人が抱く「願い」の物語
先ほどの「なんで進学、就職してるの? 飲み会参加できてるの?」という疑問への答えは、「彼女たちがそうしたいから。そして神様(という存在がいるのならば)がそうさせてあげてるから」だ。彼女たちは普通に生きたいと願い、それを少なくとも叶えている。その様子を生きている我々が覗き見る。『片思い世界』とはそういう映画なのだ。
生きている人間は死後を決して体験することはできない。できないのであれば、せめて想像するしかない。「亡くなった人たちは幸せに暮らしているはずだ」と。今でも3人は世界のどこかで笑って過ごしていてほしい、いや、過ごしているはずだ、と。
それが残された人間たちにできる唯一の救いなのではないか。
『片思い世界』は、生きている人間たちから亡くなった人間たちへの「願い」の作品だと感じた。
(文・かんそう)