「日本は従来、アニメやマンガを低く見ている感覚がある」
―――諏訪さんが考案されたトリックも数多いと聞きます。その中でも特に渾身のものはございますか?
「一番難しいのは犯行の動機なんです。みんなで作っているから僕だけっていうことはないんですけど、例えば、『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベートアイ)』(2013)の光る名刺。ちょうどその打ち合わせの1週間くらい前にキンキラの名刺をもらって『これ面白いなぁ』と思って。で、『こういうのあるよ』って言ったら『それ面白い!』って。
あと、ワインネタ。6作目『名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊』(2002)は、100年前のロンドンだったらっていって色々調べていたら、『ワイン列車』っていうのが走っていたことがわかって、ストーリーに取り込みました。
『名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』(1998)だって、犯人をソムリエにしたのも僕がワインにハマったからです。録音のとき大変でしたよ。ワイン用語ってイントネーションが難しかったりするんです。新しい世界に入ると、えらいいろんなことが起きるんですよね。
『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベートアイ)』のときも、イージス艦の話なので、イージス艦の中での掛け声のやり方みたいなことを、実際に海上自衛隊の方に来ていただいて教わりました。そういうことってこだわってますよ、みんな。符牒っていうか、その人たちだけわかる暗号ってあるじゃないですか。そういうのをちゃんとすることで、面白くなるんです」
―――今、世界的にアニメブームが起きていると言われますが、このことについてどう思われますか? 「この作品、やり方うまいな!」と嫉妬された作品があれば教えてください。
「日本は従来、アニメやマンガを若干低く見ている感覚がある。これが非常に嫌だったんですよ。40年前、僕が読売テレビに入社するとき、『マンガ読んだらバカになる』っていう時代でしたから。それを、海外からの評価も含めて、一般の人たちが『アニメってやっぱすごいんだよね』ってわかってきた。その感覚が埋まってきた。そうなってきたのは、やっぱり、アニメのいろんな作り手さんたちが面白いものを創って面白いと思わせてきたから。
そういうふうに、溝を埋めてきた感じがしますね。それが現在のアニメの隆盛に繋がってきたのは絶対あるなと。まあ、先人たちのおかげなんですけど。そして、それを理解する若い人たちが出てきたのではないかと。
最近のアニメで言うと、『ダンダダン』かなぁ。設定やストーリー展開に刺激を受けました。とりわけ、声優の田中真弓さんがターボババアって役をやるんだけど、「こんな下品な役は私しかできない」みたいなこと言って、『流石だなぁ』と思ってね」
(取材・文:近藤仁美/取材協力:あまのさき)
【プロフィール:近藤仁美】
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。
【プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
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