「目や表情だけで伝えられる術を持った方がいい」
演じることについて
ーーー役者さんの演技が本当に素晴らしかったです。リハーサルを重ねられたと思うのですが、どんなことを伝えましたか?
「しげと留蔵の存在に対する想いが、久蔵と良乃では違うということを凄く説明しました。良乃は、しげに対して非常に温かみがあって、娘のように扱いますが、侍は支配階級があって、おのずと線引きしている。ただそれは差別しているのではなく、生い立ちから線を引いているだけというような細かいところまで伝えました」
ーーー演じる上で、“目に感情を宿す”ように伝えられたそうですが、どのようなアプローチをしてその表現を引き出しましたか?
「今の時代劇は昔と違って、形で表現をしているように思うんです。ただ観る人に伝えるためには、どうすればいいかを考えた時に、目や表情だけで伝えられる術を持った方がいいんじゃないかと思いました。とはいえ、俳優はキャラクターに差を出そうとしているのか、あるいは自分の引き出しの中で『こういう感情が湧いたから、こうしよう』と思っているのか、どうしても余計な動きをするんです。なので、とにかくそれを切っていくように話しました」
ーーー現場ではどういった声掛けをされましたか?
「タイトな時間で撮影することと、少しでも余計な仕草をしたらカットするということ。あとは当然のことなんですけど、カットがかかるまで芝居を続けてくれと。台本のシーンが終わるとその後はアドリブになるわけですが、意味を持った上で、淡々と演じ続けてほしいと伝え、実際本編でもその部分を使っていたりします」
ーーー柿崎監督は、これまでにも主人公・良乃を演じた竹島由夏さんと、夫の久蔵を演じた出合正幸さんとご一緒されていますが、どんな役者さんですか?
「知り合ってから20年近くになりますが、2人とも凄く変わってるんですよ。それは境遇や役者としての想いが普通とは違っていて、テレビやバラエティ番組に出演するなど活躍する方法がいっぱいある中で、俳優だけで歩んでいきたいという精神は、まるで侍のようですね。あとは信頼関係が抜群にあるので、自分の子供に接する時と同じくらい信頼していますし、大切に思っています」
ーーーお2人のお芝居の魅力はどんなところでしょうか?
「出合正幸は俳優として、ハリウッドに行ってキアヌ・リーブスの作品に出演したこともあったりと、海外での活動を広げようとしていた時期もあるくらい様々な経験はしているのですが、まだ代表作には恵まれてないですし、お世辞にも芝居が上手いとは言えないかもしれない。ただ芝居にかける信念や情熱は半端なくて、本作でも和物作品だったため、『コーヒーを飲むな』と言えば本当に飲まなかったですし、竹島由夏は見た目はそんなに厳しい感じではないですが、物凄い闘争本能を持っていて、この子には芝居の神様が宿っているんだろうなと思います」
ーーー貴重なお話ありがとうございました!
(取材・文:福田桃奈)
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