「具体的な動きが伴えば嘘じゃなくなる」
フィクションを立ち上げる芝居のアプローチ
―――三浦さんがご出演されていないシーンでお好きな場面はありますか?
「そうですね、どうしても撮影時の思い出と切り離せないのですが…寛一郎と早乙女太一さんのアクションシーンはとても印象に残っています。天候的にもかなり過酷だったのですが、お二人の身体能力の高さには感動しましたね。段取りをちゃんと付けた上で臨んでいるのですが、お互いが『この人なら大丈夫』という信頼のもとアクションをしているのがよく伝わる。間近で見ていてハラハラしたのですが、現場で感じた迫力がしっかりと映像に定着していると思いました」
―――それに対して三浦さん演じるエマは、ドラマ後半にかけて狭い空間に閉じ込められ、手足を拘束されて拷問を受けるなど、不自由な姿勢を強いられる場面が増えますね。磔にされて電流を流される拷問シーンは痛ましかったです。凄まじい叫びをなさっていたと思うのですが、どういう心持ちで撮影に臨まれましたか?
「もちろん撮影時に本当に電流が流れているわけではないので、気持ちを作るというよりかは、ある種のパフォーマンスが必要となるタイプのシーンでした。監督とは具体的に叫び声が『キャー』なのか、『ギャー』なのか、『アー』なのか、擦り合わせをしながら、『HEART ATTACK』の世界観で痛ましさを表現する上で、どの音が適切なのかを探っていきました。悲しい表情をすれば悲しくなったり、眉間に皺を寄せたら怒りの感情が湧いてくるのと同じで、そういう音を出していると痛みや感情が呼び起こされる。それがとても面白かったです」
―――まずアウトプットのポイントを明確にして、具体に表現を合わせていくことで自然と気持ちがついてくるということでしょうか。とても興味深いお話です。
「基本的にお芝居をする時はどっちのアプローチも必要だと思っていて。例えばアクションシーンを感情だけで作っていくのは不可能だと思うんです。殴る蹴るだけでなく、転ぶとか熱いものを触るといったことも含めた広義のアクションですね。実際に熱いものを触って火傷するわけにはいかないじゃないですか。熱いことを表現する上で、熱いと思うだけではダメですが、具体的な動きが伴えば嘘じゃなくなる。そうしたアプローチを受け入れられるようになってからは、視野が広がった気がします。今回の拷問シーンも、そういうアプローチで臨んだ場面でした」