「とにかく笑って欲しい」劇場版『僕とロボコ』大地丙太郎監督インタビュー。アニメに込める想いを語る
2020年より週刊少年ジャンプにて連載が開始され、2022年からは、1話3分のTVアニメとして放送が開始。そして今年4月18日(金)より劇場版『僕とロボコ』が公開された。今回は、本作の監督を務める大地丙太郎さんにインタビューを敢行。制作秘話から、これまでのキャリアについてお話を伺った。(取材・文:福田桃奈)
「楽しんではいけない」
ギャグアニメ制作の流儀
ーーTVシリーズを監督することが決まってから原作を読まれたそうですが、読んでみていかがでしたか?
「ギャグ満載というところで、2005年から監督を務めているアニメ『ギャグマンガ日和』に続くような作品でした。これをアニメ化するには、どういう風に組み立てて構成していくか?どう尺を詰めていくかということで、頭がいっぱいでしたね。僕らの仕事は、原作を読む時に楽しんじゃいけないんですよ」
ーー「楽しんじゃいけない」。ギャグ満載な作品ですから、一見正反対な思考のようでとても興味深いのですが、そういった考えになったのには何かきっかけがあったのでしょうか?
「忘れもしないのが、1998年に監督を務めたアニメ『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』の時に、原作があまりにも面白くて読んでる時は楽しんで読んだんですが、いざ制作するとなった時にプレッシャーを感じて緊張して自信をなくしてしまったんですね。その時のことがあるので、あくまでもプロフェッショナルな視点で原作を読むようにしています。楽しむのは仕事が終わってからですね」
ーー本作の監督をする上で、どんなところに重点を置きましたか?
「表面上は強烈で、引くくらいのギャグテイストはあるんだけど、ロボコの根底には、可愛さや、女の子らしさ、愛らしさがあって、そういう“いじらしさ”が出るように考えました」
ーーTVシリーズは1話3分というかなり短い尺ですが、毎話オチをつけて3分に収める作業はなかなか大変だったのではないでしょうか?
「『ギャグマンガ日和』の時も、原作を削りながら尺に収める作業をしていたので、ロボコはどのくらいになるんだろうと実験するところから始めました。まともな感覚でやったら、ロボコが登場する前に3分経ってしまって…。1話に関しては、ラストでロボコが車に轢かれそうになったご主人様を助けるというシーンで“間”を取らないといけない。その上でロボコとの繋がりを入れ込むというのがかなり大きな命題でしたね。3、4回やり直して、形成していきました」
ーー絵コンテを拝見させていただきましたが、流れるようなスピード感と躍動感に溢れ、とてもワクワクしました。大地監督は絵コンテの段階でセリフを足すことがあるそうですね。
「やっぱりリズム感を一番重要視しているので、シナリオのテキストだけでは表現しきれないところを書き足します。今回の劇場版に関しては、TVシリーズとは逆の作業で、原作から膨らませてオリジナルを入れないといけない。これはとても難しい作業でしたね」
ーー1番苦労した点はどんなところでしたか?
「尺入れと言って、絵コンテを自分の頭の中で流しながら、ワンカットずつストップウォッチで秒数を測るんですが、この時に流れが悪くないかどうか添削していく作業が一番大変でした。劇場版は、原作のベーシックな部分を残しつつ、他のエピソードからネタを持ってきたり、原作のラストをそのまま使うのではなく、劇場に足を運んでくれた人に、もう一つサービスできないかをみんなで考えました。最終的にはうまいところでハマってくれたかなと思っています」