リリイ・シュシュのすべて　【ネタバレあり】あらすじ

5人は沖縄旅行を満喫。島巡りをしているという職業不明の男・高尾（大沢たかお）とは道中で何度も顔を合わせ、交流を深める。そんな中、星野が波に飲み込まれ、心肺停止状態に陥る。高尾による必死の人工呼吸が功を奏し、星野は息を引き返す。高尾は星野に向けて「命は大切にしなければいけない」と告げ、5人と別れる。しかし、その直後、高尾は交通事故に遭い、命を落とす。

その後、５人はフェリーに搭乗。星野は突然、余ったお金を海に投げ捨ててしまう。悲鳴を上げる4人を尻目に、星野は不敵な笑みを浮かべていた。

新学期が始まった。星野が沖縄で死にかけた話は、すでにクラス中に広まっている。そんな中、星野はクラスメイトの犬伏（沢木哲）と喧嘩になり、凶器を使って一方的に暴行する。夏休み前まで犬伏はいじめっ子、星野はいじめられっ子であった。気弱だった性格が豹変し、残酷な一面を見せるようになった星野。剣道部に顔を出さなくなり、雄一はそんな彼のいじめのターゲットになった。

雄一は、同じクラスの津田詩織（蒼井優）を尾行するように、星野から命令される。詩織は援助交際をしており、カラダを売って稼いだ金を、星野に貢いでいた。その日も彼女はホテルに足を運び、スーツ姿の男性と関係を持った。雄一は帰路につく詩織の後ろを力なく歩く。雄一は詩織から金を差し出され、受け取ろうとする。しかし、詩織はその手を引っ込め、金を地面に叩きつけると、憎らし気に踏みにじった。川に飛び込んだ詩織は全身泥だらけになり、涙を流す。

季節は秋になり、合唱コンクールが近づいてきた。ピアノ演奏は、優等生の久野陽子（伊藤歩）が務めることになる。しかし、一部の女子は久野のことを嫌っており、練習をボイコット。結局、雄一のクラスは伴奏なしのアカペラで本番を乗り切ることになった。本番中、ピアノの横で佇む久野の姿を、観客席の星野は爪を噛みながら見ている。

合唱コンクールが終わると、雄一は学級委員の佐々木（細山田隆人）に呼び出される。佐々木は詩織に好意を寄せており、詩織と雄一が付き合っていると思っていた。佐々木は、雄一が詩織の恋人ではないと知ると、安堵。告白したいから詩織を呼び出してくれと懇願する。その夜、雄一は詩織に電話をかけ「佐々木だったらお前を助け出すことができる」と告げる。

雄一は星野の命令によって、久野を廃工場へと誘導する。工場の中には不良少年たちが待ち構えている。彼らは久野をレイプし、その様子をビデオで撮影する。工場の外では星野が平然とした様子で煙草を吹かしている。雄一は久野に思いを寄せており、レイプに加担した自身を不甲斐なく思い、体を震わせて泣くのだった。

事件後、久野は学校を数日間休むが、しばらくして再び登校する。久しぶりに姿を現した彼女の頭は丸坊主になっていた。騒然とするクラスメイトをよそに、久野は落ち着いた様子をみせる。

男とホテルで過ごしたあとに、詩織は雄一とレストランで食事をする。詩織は佐々木の告白を断った。雄一に対し「あんたが私を守ってよ」と告げるが、雄一はその思いに応えることができない。帰り道。詩織は雄一にリリイのCDを貸してほしいと言う。新譜は星野によって破壊されてしまったため、雄一は以前のアルバムを貸してあげる。詩織は雄一と別れた直後、鉄塔から身を投げて自殺する。

辛い現実に押しつぶされそうな雄一は、ネットを介してリリイファンと繋がることで、なんとか精神の均衡を保っている。そんな中、リリイのライブが年の瀬に開催されることになった。雄一は「青猫」とライブ会場で会う約束をかわす。「青猫」は青リンゴを持って会場に訪れると告げる。

ライブ当日。入場口付近は多くのリリイファンで賑わっている。雄一が「青猫」を探していると、星野が現れる。星野は雄一からチケットを奪い取ると、飲み物を買ってくるように命令。その際、雄一に青リンゴを渡し、「誰かに声をかけられたら教えろ」と告げる。青リンゴには「青猫」のアカウント名が書かれている。星野は雄一のチケットを破り捨てると、会場の中へと消えていった。

雄一はライブが終わるのを待っている。終演後、星野は雄一のもとに駆け寄り、青リンゴを回収。雄一は、星野から「誰かに話しかけられなかったか？」と訊かれ、首を横に振る。会場前には沢山の人だかり。雄一は突然「リリイだ！リリイがいるぞ！」と声を張り上げる。その場はパニック状態になり、人々が押し合いへし合いする中、雄一は星野の背後に回り、ナイフで刺す。星野はその場に倒れ込み、しばらくして周囲の人々が異常に気付く。いち早くその場から離れた雄一の手元には、ナイフが刺さった青リンゴがある。

リリイ・シュシュのライブ会場で起こった出来事は「キャトル事件」と呼ばれ、未解決事件として世間を騒がせている。中学3年生になった雄一は美容師の母に髪を染めてもらう。ある日の放課後、久野が弾くピアノの美しい音色が校内に響き渡る。雄一は音楽室に足を踏み入れ、演奏する久野の後姿を見つめるのだった。