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リリイ・シュシュのすべて 脚本の魅力

脚本の基となったのは、監督本人手がけた同名のインターネット小説である。映画版では主人公が所属するのは剣道部だが、小説版では陸上部。細かい相違点はあるものの、基本的なプロットは同じだ。

映画が製作された2001年当時は、ニュースを騒がせるような少年犯罪が多発しており、劇中では2000年に起きた西鉄バスジャック事件をモチーフにした描写がある。他にもいじめ、援助交際、レイプといった観る者を不快にさせるような、過激な要素が散りばめられている。

物語のターニングポイントとなるのは、元々いじめられる側にいた星野(忍成修吾)の、いじめっ子への変貌である。その背景には沖縄旅行での臨死体験と家庭崩壊が関係しており、後者はセリフで仄めかされるのみだ。沖縄旅行のシーンは独立した短編映画のようであり、15分以上もの尺を持っている。

しかし、長さの割には、星野が瀕死の状態から蘇るシーンを除いて、本編と関わりのある内容は描かれておらず、消化不良な印象をもたらす。もちろん、旅行シーン全体が少年たちの通過儀礼としてあり、作品のテーマと密接に関係していると解釈することも可能だ。しかし、そう解釈するためには、観客はシーンが象徴する意味を能動的に読み取る必要がある。

本作の脚本は、緻密なロジックでシーンの意図を正確に伝えるのではなく、観客の想像力に寄り掛かり、多様な解釈を促す性質を持っているため、好き嫌いが分かれるのは必至だろう。

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