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リリイ・シュシュのすべて 映像の魅力

2000年代以降、フィルムカメラではなく、デジタルカメラによって映画を制作する流れが加速。現在、国内で製作されている映画のほとんどはデジタル作品である。本作は国内で最も早い時期に製作されたデジタルシネマの一つだ。

デジタルカメラは鈍重なフィルムカメラに比べて機動力に優れ、電車の中や人でごった返すライブ会場のシーンでは躍動感のあるカメラワークが見られる。カメラを固定して撮影した映像は数えるほどしかなく、大半のカットはブレをともなう手持ち撮影によるもの。とりわけ、田園風景の中、雄一がCDプレイヤーで音楽を聴くシーンは圧倒的な浮遊感があり、観る者の脳裏に焼き付いて離れない。

撮影監督の篠田昇は『Love Letter』(1995)や『スワロウテイル』といった他の岩井作品も手がけた名カメラマン。淡い逆光を活かした審美的なショットが持ち味である。本作では上で触れた田園のシーン以外にも、陽子が音楽室でピアノを弾くシーンや、雄一が巨大スクリーンに投影されたリリイシュシュの前で佇むカットなどは、あまりの美しさにため息が出るほど。

画面に差し込む美しい光は、登場人物の身体に陰影を与え、残酷な物語に独特の幻想性をもたらしている。

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