脚本デビュー作から光っていた福徳秀介の才能
本作でまず驚かされるのが、原作者のジャルジャル福徳秀介さんの恋愛小説家としての才能だろう。観客を一瞬で物語の世界に引き込む、掛け合いやユーモアや展開のセンスは「ネクスト坂元裕二」と例えても言い過ぎではないように思える。
そんな、ほとばしるセンスが垣間見えているのが、吉本興業発のオムニバス映画『半径1メートルの君 ~上を向いて歩こう~』(2021)内の短編作品で、福徳さんの脚本デビュー作となった『まわりくどい2人のまわりくどい気持ちの伝え方は大胆でむしろまわりくどい』だ。
カフェを舞台に、好きな女性が服を買ってきてくれたときのために全ての商品のポケットに手紙を入れているアパレル店員(後藤淳平)と、好きな男性がめくってくれたときのためにミルクレープに1層1層にメッセージを書いてるカフェ店員(白石聖)という“まわりくどい2人のまわりくどい駆け引き”を描いた恋愛コメディだ。
ジャルジャルのコントのキャラのような「変な奴」たちも、恋愛というマジックのおかげで地に足ついたキャラとして愛おしく思えてくる不思議な魅力を持った作品となっている。
そして、『まわりくどい〜』の「まわりくどさ」は、『今日の空が〜』では「助走」と言い換えられる。シンプルに想いを伝えられない、だから超長台詞によって助走をつける。そんなまわりくどい長台詞シーンが本作でも3か所、それもかなり印象的に、というか映画史に残る名シーン級の破壊力をもって登場する。このような “まわりくどい登場人物たちがまわりくどく思いを伝える話”というのが、福徳さんが描くラブストーリーの特徴なのかもしれない。