距離を詰めた2人に訪れる悲劇

©2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
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 この映画は「偶然」にまつわる映画だ。冴えない大学生活を送る小西徹(萩原利久)と桜田花(河合優実)は2年生の春、ある授業で偶然出会う。

 パンフレットによると、大九監督が「小西と桜田は大学2年生なのに、あの日に出会ったのか?」と原作者の福徳さんに尋ねたところ、「それは奇妙な偶然としか言えない出来事なんですよ」と答えられたそうで、本編ではそれを「セレンディピティ」という言葉で表現している。「思いがけない偶然がもたらす幸運」を意味する、ペルシャのおとぎ話『セレンディップの3人の王子』が語源の言葉で、劇中の花の言葉を借りると「ナイスな偶然ばんざーい!」だ。

 偶然出会った小西と桜田は、偶然の積み重ねによって距離を詰めていく。が、そんなナイスな偶然の連続でもたらされた幸運のぶり返しのように、後半では不運な偶然の連続による“とある悲劇”が起こる。「雨雲」「緑雨」「虹橋」だった各章のタイトルも、第4章にして「雷鳴」へと変わり、キラキラ青春恋愛映画の反動のような暗雲立ち込める後半パートが幕を開ける。

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