「私自身もすごくグッときた」
徐々に成長していくキャラクターを演じて
―――本作では長めのワンカット撮影や、カメラと被写体の間の距離が遠く、表情がはっきり写らないシーンも多かったと思います。演じるうえで意識していたことはありますか?
「他の子が話しているときに、ちえちゃんは無言でじっとしている場面も多かったので、『どうやってこの会話を聞いているんだろう…』『どういう表情や仕草がちえちゃんらしいかな…』ということを常に考えて演じました。『どうせ私なんかが…』と思って発言できずにいる場面でも、きっと心に抱くものはあるはずなので。どういう感情で、どういう立ち振る舞いでその場所にいるのか。セリフがないシーンも彼女の気持ちを想像して演じました」
―――冒頭の教室のシーンは、特に長いワンカットでした。相当な緊張感を持って撮影に臨まれたのではないでしょうか。
「あの撮影は大変でした…(笑)。順を追ってワンカットで撮っていくので、待機しているときにカメラに映ってしまうこともあって。『ここで待つ』とか『このタイミングで入っていく』など、ひとつひとつ計算して監督と練習しました」
―――特に中山さんはカットの途中から参加する役柄なので、フレームインのタイミングには相当配慮されたのではないでしょうか。
「入るタイミングは本当に難しかったです。皆さんの動きを伺いながら、『よし! 今だ!』みたいな(笑)。でも、映っている人がどんどん変わっていくのもあって、演じていて楽しかったです」
―――映画の終盤、橋の上で登場人物たちが今まで抱えていた気持ちを吐露するシーンも印象的でした。この場面も長めのカットでしたが、撮影に挑むにあたってどのように気持ちを作っていきましたか?
「そもそも、ちえちゃんが思っていることを言葉にできるようになったのは、同じ班の5人の存在が大きいと思っています。だから、今までの撮影や役を演じたシーンを思い出すようにして、吉田晴登くんが演じる飯島くんの目をしっかり見て、『伝えたい気持ちがあるんだ』ということを意識しながら演じていました。
恥ずかしい過去や苦しかった記憶を吐き出すのは本当に勇気が要ることです。ひとりひとりが自分と向き合い、気持ちを言葉にして伝えている姿を見て、私自身もすごくグッときました」