「研ナオコさんに対する愛情が強くなっていった」
自然な演技を生み出した研ナオコとの絆
ーーー加那役に挑戦して、苦労したことはありましたか?
「おばあちゃん役の研ナオコさんとのシーンが多くあったのですが、時々、加那としてではなく、私自身の気持ちが前に出すぎてしまうことがありました。撮影を重ねるうちに、研さんへの愛情や『家族なんだ』という思いがどんどん強くなっていったんだと思います。それは、信頼関係が生まれるという点では良いことだとおもいますが、一方で、お薬のシーンで喧嘩する場面や、『本当は私、こういう仕事をしているんだよ』とおばあちゃんに打ち明ける終盤のシーンなど、物語として感情が爆発するような、わかりやすい演技が求められる場面が、とても難しいと感じるようになりました。
『私のおばあちゃんを介護している』という感覚で演じていたので、感情を一気に爆発させるような表現にはどうしてもなれなくて…。俳優として未熟なことだと思いますが、そこは本当に苦労しました」
ーーー撮影現場では、中尾さんと研さんとの間に本物の信頼関係が形成されていたのですね。作り物ではない自然な演技が堪能できるという点は、本作の得がたい魅力だと思います。『本当の家族みたいになった』とのことですが、お2人の関係性が深まるきっかけとなったエピソードはありますか?
「そうですね。撮影の合間にお話させていただきました。ものすごく優しくて、強くて、本当にお茶目な方で…勉強させていただいたこともたくさんありました 。
私が車椅子を持っていることが多かったので、少し離れた撮影場所へ移動するときなどは、研さんを車椅子に乗せたまま、私が押して2人で移動することがよくありました。そういう日常の小さな積み重ねが、私が役と自然に繋がった理由のひとつなのかなと思います」