繊細な表情で演じ分ける主人公の成長

―――作中では、おばあちゃんから「仕事は生きる糧」と何度も声をかけられ、その度に、ソープ嬢として働くことに誇りを持てずにい加那は、少し居心地の悪そうな表情を見せます。そのような描写が頻出しますが、中尾さんは毎回異なる表情をされているように思いました。

「意図的に演じ分けたつもりはありません。ただ、物語を通して、加那の中ではいろいろな変化が起きていて、自分自身に対する考え方も徐々に変わっていく。それが表情に反映されたのかもしれません。

本作は、お母さんにも『風俗店で働いているんだよ』っていうのを言えるようになるまでの物語だとも思っていて、最初は何も言えなかった加那が、少しずつ変わっていく。その過程が自然と表情にも表れていたのかもしれません」 

ーーー時間をかけて演じていくことによって生まれた自然な表情だったんですね。
 
「そうだと思います。でも、徐々に感情が変化していく感覚は、自分の中にもありました」