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少年犯罪が及ぼす爪痕を描いた衝撃作。映画『赦し』映画監督・本木克英や作家の岩井志麻子ら16名のコメントが到着

text by 編集部

娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者の女性。癒やしようのない苦しみに囚われた3人の葛藤を見すえ、魂の救済、赦しという深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作『赦し』が3月18日より公開される。 それに伴い、16人もの著名人によるコメントが到着した。

日本在住の気鋭のインド人監督
アンシュル・チョウハンの最新作

©2022 December Production Committee All rights reserved

7年前に高校生だった娘の恵未をクラスメートに殺害されて以来、酒に依存して現実逃避を重ねてきた樋口克のもとに、裁判所からの通知が届く。懲役20年の刑に服している加害者、福田夏奈に再審の機会が与えられたというのだ。大切なひとり娘の命を奪った夏奈を憎み続けている克は、元妻の澄子とともに法廷に赴く。しかし夏奈の釈放を阻止するために証言台に立つ克と、つらい過去に見切りをつけたい澄子の感情はすれ違っていく。やがて法廷では夏奈の口から彼女が殺人に至ったショッキングな動機が明かされ、澄子は裁判から身を退くが、復讐の殺意に駆られた克はある行動を起こすのだった……。

法廷の内外での激しくも揺らめく感情を体現した尚玄×MEGUMI×松浦りょうの迫真のアンサンブル。本作のメガホンを執ったアンシュル・チョウハンは、長編第2作の『コントラ』(19)では、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭でグランプリ、北米最大の日本映画祭ジャパン・カッツで第1回大林賞を受賞したインド出身の気鋭監督。

国内外で注目度が高まっている監督が、これまでの作風を一変させ、重厚でリアリスティックな語り口を披露した『赦し』は本格的な裁判劇でもある。法廷における裁判官、弁護士、検察官、証人のやりとりを臨場感たっぷりに描出し、スリリングな展開と、登場人物たちが抱く不安、迷い、痛みをシンクロさせた濃密な映像世界から目が離せない。

怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公、克を演じるのは、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサと組んだ主演作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』が記憶に新しい尚玄。元妻の澄子に扮するのは、第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞した『台風家族』『ひとよ』などで多彩なキャラクターを演じてきたMEGUMI。深い喪失感を共有しながら、対照的なベクトルで裁判の成り行きを見つめる元夫婦の複雑な思いを表現。

さらに、澄子の現在の夫を演じるオリエンタルラジオの藤森慎吾、裁判長役を毅然と体現した真矢ミキがドラマに厚みを与える。そして、夏奈役に抜擢された松浦りょうのキャスティングも見逃せない。映画デビュー作「渇き。」など独特の存在感を示してきた新進女優が、本作における最大の発見としてあらゆる観客を驚嘆させるだろう。

著名人16人によるコメントが到着

本木克英(映画監督)

松浦りょうの凄まじいオーラが、この映画を覆っている。加害者として長期に及ぶ罪悪感と苦悩、やりきれない境遇を凝縮し、体現してみせる力にもはや言葉は要らない。大人たちの諍いが軽々しく思えるほどである。

岩井志麻子(作家)

観る前は、私は罪人である彼女を赦す側に立ち、本当に赦せるかどうかを試されるのだと思っていた。見終わった後、どうか私を赦してくださいと泣いていた。

木村草太(憲法学者)

辛い出来事にあったとき、人は原因を探し求めずにはいられない。何を赦すのか?何のために赦すのか?法はその助けになるだろうか?

暉峻創三(映画評論家、大阪アジアン映画祭プログラム・ディレクター)

勝ち負け、白黒では決着のつかない、人の心の深淵。その揺らぎをここまで鮮烈に炙り出せるのは、アンシュル・チョウハンだけだ。

石井光太(作家、ルポライター)

少年犯罪の加害、被害、そして司法のゆがみを、両親の慟哭を通してむごたらしいまでに伝える良作だ。

春名風花 (俳優)

これは加害者を赦す物語ではない。罪に囚われた全ての人へ与えられる”赦し”の物語だ。変わらない過去にどう向き合うのか。憎しみは、愛より深いのだろうか。本当に大切なものと向き合えたとき、私たちは赦される。

川口敦子(映画評論家)

人が人を赦すこと、その実相、そのやっかいさに安易な答えを与えずに、人人人それぞれの心と対峙して、情緒を退けみつめる監督の眼差しは、ふやけたやさしさばかりの日本の今、きな臭い世界の今をも刺し貫いて静かに苛烈だ。

伊藤詩織 (映像ジャーナリスト)

被害者、加害者、被害家族、加害家族、それらは法の判断の下に付けられたラベルであり、その人たちには名前があり、愛する人がいて、それぞれの人生があるのだ。そんな当たり前のことを私たちは報道の情報だけを消費し、他人事なのだと見ていると忘れてしまう。この映画はその重要な要素を目の前に突きつけてくれた。

佐藤佐吉(映画監督、脚本家、俳優)

この映画は『赦し』を乞う物語でも与える物語でもなく、自分を赦せない人間たちの苦しみと悲しみを徹底的に描いた作品だ。登場人物たちが果たして『赦し』を得たのかどうか、それは彼らが最後に見せる強烈な視線から我々が読みとるしかない。ひとりでも多くの人にこの類まれな傑作が届くことを切に願う。

品川ヒロシ(映画監督)

苦しくなる映画。とにかくリアルで、ただ同情するように出来ていなくて考えさせられる展開。後半は胸に突き刺さる。役者の演技が真に迫る。

杉野希妃(俳優、映画監督、プロデューサー)

赦せない、赦されたい、忘れたい、忘れられない…声にならない無数の叫びが渦巻いていた。たったひとりで向き合うしかないという孤独も、それを乗り越える強さも、私たちの中にあるとこの映画は教えてくれる。

古舘寛治(俳優)

誰かの立場に立つ「共感」、その「想像」という人間性を守るための力を我々は失ってはいないか?映画はそれを問いかけてくる。

堀 潤(ジャーナリスト)

客観を追求した映像が圧巻だった事件の骨格を剥き出しにした見るものの感情さえ奪う松浦りょうの演技が深淵を見せた主観だけでは「罪と罰」には向き合えない問われたのは私だ

髙橋知典(レイ法律事務所弁護士 )

被害者らしさ加害者らしさを求めるおかしな社会に疑問を投げかける、生きる人を映した映画

横山智実(弁護士)

未成熟な存在が背負うには重すぎる、罪への責任、世論、被害者遺族の思い。その先にある一縷の望みと力強さを感じさせる映画でした。

【STORY】

かつて17歳の少女だった夏奈は、同級生の少女を殺害した。あれから7年、20年の刑を受けた夏奈に再審の機会が与えられ、釈放される可能性があると連絡を受けた被害者の父・克と、別れた元妻・澄子。二人はともに法廷に赴き裁判の経過を見守ることになるが・・・。

当時の裁判では殺害にいたる経緯を話すことなく、検察の請求のままに刑が確定した夏奈。再審請求は、被害者の親二人の心を大きく揺さぶっていく。7年が経っても決して薄れることのない彼女への怒りと憎しみは、周りを巻き込みながら大きく変転をしていくのだった。加害者の夏
奈だけではなく、まるで囚人のように「娘を殺されたこと」への怒りから逃れることのできない、かつての親たち。そこから人はどうやって一歩進んでいくのか?

【作品情報】

『赦し』

©2022 December Production Committee All rights reserved

監督・編集:アンシュル・チョウハン(『コントラ KONTORA』 撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真
出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 藤森慎吾 真矢ミキ
プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン/エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウランカスター文江/アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘/脚本:ランド・コルター
助成:文化庁 製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS 配給:彩プロ
2022 年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98 分/原題(英語題):DECEMBER
©2022 December Production Committee. All rights reserved

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