大人にこそ観てほしい一作
なお、キャラクターという切り口でいえば、もう少し掘り下げて知りたかったこともある。それは、悪役たちの過去だ。本作では、敵役が最初から最後まで悪なので、なぜそのような思想に至ったのか、多少の疑問が残った。
もちろん、「そういう人なんです」といわれればそれまでだし、世の中には特段の事情なく他者を害する者もいるだろう。加えて、これ以上作中で語ることが増えると収集がつきにくいということも、想像はつく。それでも、できることなら各々の事情を知りたかった。もしこのあたりが描かれていれば、より感情移入しながら鑑賞できた気がする。
ところで、本作は「裏『社員』」だけあって基本的に社会人たちの物語なのだが、どこか学生時代の放課後のような他愛のない楽しさや、文化祭のような高揚感がある。それは、商店街のお祭りを復活させるという展開によるものかもしれないし、同世代の他人同士が少しずつ友達になっていくという流れによるものかもしれない。
1番大きいのは、このメンバーならどこで何をしていても楽しいという、物語終盤の境地だろう。……最後にこう思ったのは、えーと、いつだろう。そんな、心のみずみずしさを補充したい大人にもおすすめできる作品である。
(文・近藤仁美)
【作品情報】
「裏社員。-スパイやらせてもろてます-」
公開日:2025 年5月2日(金)
監督:瑠東東一郎 脚本:我人祥太、モラル
制作:松竹撮影所 配給:松竹
主演:WEST.(重岡大毅、桐山照史、中間淳太、神山智洋、藤井流星、濵田崇裕、小瀧望)
出演:恒松祐里 森香澄 剛力彩芽/藤原紀香 竹中直人 ほか
主題歌:WEST.「ウェッサイソウル!」(ELOV-label) 作詞・作曲:トータス松本 サウンドプロデュース:ウルフルズ
©2025「裏社員。-スパイやらせてもろてます-」製作委員会