広瀬すずと吉田羊が紡いだ多面的な女性像

映画『遠い山なみの光』(左から)広瀬すず、吉田羊【写真:映画チャンネル編集部】
映画『遠い山なみの光』(左から)広瀬すず、吉田羊【写真:映画チャンネル編集部】

 広瀬すずが演じた主人公・悦子は、戦後の混乱にも負けず、前を向いて強かに生き抜いていく女性であり、作品に稀有なエネルギーをもたらしている。一方、映画は時制を大胆に操り、1982年のイギリスで暮らす悦子(吉田羊)とその娘・ニキとの関係も映し出す。日本から遠く離れた異国で暮らす悦子は、長崎時代の面影を残しつつ、どこかメランコリックな雰囲気を濃厚にまとっている。

「悦子」という一人のキャラクターを演じた広瀬すずと吉田羊は、カンヌ国際映画祭という大舞台、会場となったドビュッシー劇場の大スクリーンでそれぞれの芝居を観て何を感じたのだろうか。

広瀬すず「自分が演じた悦子と、吉田羊さんの悦子、それぞれ表情は違うはずなのに、一人の人物として見える。この感覚は、完成した映画を観てようやく腑に落ちました。長崎パートが先に撮影され、その後ロンドンパートの撮影が行われましたが、他のシーンとの繋がりは完成版を観るまで分かりませんでした。だからこそ、完成版を観たときの驚きが大きかった。今日は2回目の鑑賞ですが、ようやく客観的に観られた気がします」

吉田羊「広瀬さんの芝居からヒントを得ようと長崎の撮影現場を見学し、イギリスでの撮影時も映像を見返しました。他方で現場では、目の前のニキ(カミラ・アイコさん)と向き合いながら、その場で感じたことを大切にして演じることに集中しました。完成した映画を観たとき、長崎パートの皆さんが本当に生命力にあふれていて、その姿に心を動かされました。

特に広瀬さんが演じた若き日の悦子は、先進的で多彩な女性像として描かれていて、バイオリンを弾き、英語を話し、海を渡っていく行動力や前向きさがしっかりと伝わってきました。悦子という人物の生き様に触れることは、私自身にも大きな励みとなりました。この映画は、自分らしく生きたいと願う女性たちの背中を押す作品になると思います」

 映画『遠い山なみの光』は9月5日(金)全国公開予定だ。

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