ステレオタイプなジェンダー観を乗り越えるために
さらに、映画の中で描かれる女性像にも話題が及んだ。早川監督は過去の映画やドラマをジェンダーの問題を意識して見た時に、「女性はよく泣き、かつ助けられる存在」として描かれることが多かったと語る。「メディアや映画から、女性としての振る舞いを知らず知らずのうちに刷り込まれていたのだと、ようやく気が付きました」。
一方、是枝監督は、基本的に映画制作時には周囲の女性に脚本を読んでもらい、意見をもらっているという。『そして父になる』(2013)を作った時には、「女性が子供を産んだら、すぐに母親になる」という考え方自体も、偏見と思い込みではないかとの指摘を受けた。「常に映画を作っては反省し、また次に繋げての繰り返しでここまできています」と心境を吐露した。
今回は短い時間の中ではあったが、第一線で活躍する現役の監督だからこそ語れる実感を伴った言葉が聞けた貴重な機会になった。民間企業が女性監督を応援する貴重な取り組みに、今後とも継続と発展を期待したい。
【著者:林瑞絵プロフィール】
在仏映画ジャーナリスト。北海道札幌市出身。映画会社で宣伝担当を経て渡仏。パリを拠点に欧州の文化・社会について取材、執筆。海外映画祭取材、映画人インタビュー、映画パンフ執筆など。現在は朝日新聞、日経新聞の映画評メンバー。著書に仏映画製作事情を追った『フランス映画どこへ行く』(キネマ旬報映画本大賞7位)、日仏子育て比較エッセイ『パリの子育て・親育て』(ともに花伝社)がある。@mizueparis
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