「色んな思いがあるからこそ、演じていて辛いシーンもあった」映画『父と僕の終わらない歌』主演・松坂桃李、単独インタビュー

text by 根津香菜子

アルツハイマー型認知症と診断された父が、息子のために諦めた夢に再び挑む姿を描いた映画『父と僕の終わらない歌』が、5月23日(金)より公開中だ。本作で、父の発病を機に実家へ戻る、間宮雄太を演じた松坂桃李さんにインタビューを敢行。役柄や作品から受け取った思い、出演作を届ける意義について伺った。(取材・文:根津香菜子)

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「いつか家族や自分も患う可能性がある」
認知症と向き合うきっかけに

松坂桃李 写真:武馬怜子
松坂桃李 写真:武馬怜子 撮影協力:Kao

―――本作は「認知症」がひとつの大きなテーマでしたが、松坂さんはこれまで認知症について考えたことはありますか?

「この作品に出演するまで、そこまで深く考えたことはありませんでした。でも、僕も家族を持ったことや、さらにこの先年齢を重ねていくことを考えると、自分にも起こり得る病なのだと実感しましたし、他人事とは思えなくなりました。

この作品に参加させていただいたことで、認知症というテーマと改めて向き合うことができたし、自分にとっても大きなきっかけになったと感じています」

―――認知症に限らず、病気は本人がなりたくて患うわけではないので、症状の1つである「記憶を失う、忘れてしまう」ということも、本人はもちろん、支える家族も辛いところですよね。

「そうですよね。そこで本人と支える人たちの間に歪みが生まれ、ご家族も心を病んでしまうという話もよく耳にします。“病”との向き合い方によっては、そうした状況を少しでも和らげることができるのではないかと思います」

―――本作の出演にあたって、認知症について事前に勉強したことや、準備されたことはありますか?

「映画では、僕が演じた間宮雄太も徐々にアルツハイマーと向き合いながら、少しずつ理解を深めていきます。僕も事前に、『こういう症状が出る』『こういったことが起こりうる』といったある程度の知識を持って撮影に臨みました。でも、いざ現場に入って芝居していると、そういった情報や知識は忘れてお芝居していました。

雄太はイラストレーターをしているので、イラストを描く練習も少ししましたが、本作は何よりも、父・哲太を演じる寺尾聰さんとのお芝居が重要になってくると思っていたので、その“やり取りの質感”のようなものは大事にしようと意識していました」

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