親子の絆に隠された深い愛情と葛藤

松坂桃李 写真:武馬怜子
松坂桃李 写真:武馬怜子 撮影協力:Kao

―――父の哲太は、横須賀で楽器店を営みながら、地元のステージで時折歌声を披露しては喝采を浴び、ユーモアのある地元の人気者ですが、母・律子(松坂慶子)を含めた間宮家の親子関係は、どう映りましたか?

「あんな両親に育てられたら、それはもう幸せだろうなと思います。遊び心を忘れない父親と、それを包み込んでくれる寛大な温かさを持った母親。その2人に育てられた子供というのは、それは清らかな心を持っているんだろうなと(笑)。息子としては親の心配もするけど、寄り添いたくなるような愛嬌のある2人だなと思いました」

―――本作の監督を務めた小泉徳宏さんの作品の魅力や、監督が作り出す世界観の中で、特に惹かれるポイントがあれば教えてください。

「本作で扱っているテーマは決して軽いものではないので、観終わった後に少し沈んだ気持ちになるかもしれません。でも、それをエンターテイメントとして昇華させ、晴れやかな余韻にまでつなげられるのは、やはり小泉さんの力だと思います。

言葉にするのが難しいですが、悲しさを含んだ物語でありながら『とっても素敵な親子だな』と思えるような、ハートフルな作品になっているのは、小泉さんならではだと思います。そのあたたかさが、映画をご覧になる皆さんにも伝わったら嬉しいです」

―――認知症の症状が進むにつれ、暴言を吐いたり気性が荒くなっていく夫を支え続けた律子さんが、その複雑な思いを吐露するシーンは、胸を打たれました。

「僕もあのシーンは演じていて辛かったです。やっぱり息子としては苦しいところでもあるんです。施設には入れず、ずっと家で自分が看たいという母親の思いはよく分かるし、叶えてあげたいのは山々だけど、現実的に客観的に考えるとこっちの選択肢を選んだ方がいいんじゃないか、その方が安全なんじゃないかと思いたくなる。その葛藤は、松坂慶子さんのお芝居を見ていても、とても苦しいものがありました」

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