「さすが百戦錬磨のお三方」映画『父と僕の終わらない歌』小泉徳宏監督が語る、実話を映像化する“意義”とは? インタビュー

text by あまのさき

寺尾聰、松坂桃李主演の映画『父と僕の終わらない歌』が5月23日(金)より公開される。本作は、若き日に諦めたレコードデビューの夢をかなえようとするアルツハイマー型認知症の父と、彼を支える家族の姿を描いたヒューマンドラマだ。今回は、小泉徳宏監督へインタビューを敢行。撮影の裏側を語っていただいた。(取材・文:あまのさき)

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「どこを中心に据えるかを見極めなければならない」

小泉徳宏監督
小泉徳宏監督

―――寺尾聰さんが主演ということで音楽要素が強い作品かと思っていたのですが、映画を拝見してみると、家族愛にこそ重きを置かれている作品だと感じました。監督ご自身、制作の過程で「父が自分のことをどう思っていたのか見つける姿を描く」というところを軸にしたいと思われたようですが、どのようなタイミングでそこに舵を切ったのでしょう?

「この作品は実話をもとにしているんですが、親子や家族、アルツハイマー、音楽といったいろんな切り口で語れるからこそ、全部を均等に描こうとすると散漫になってしまうという懸念がありました。実際に脚本をつくっている段階からちょっとしたことでバランスを崩してしまうことがあって、どこを中心に据えるかを見極めなければならないと思っていて。脚本をつくる終盤で、一気に親子の話に焦点が合っていきました。延べ3、4年かけて開発していた脚本の、最終的な方向性が決まったのはラストの半年ほどだったと思います」

―――親子をテーマにしようと思ったのは、キャスティングも関係していたのでしょうか?

「やはりキャスティングは大きかったと思います。寺尾さんや松坂桃李さんが演じてくださるということが見えてきて、このお2人の関係性を強く見せていかないと、何を観ていい映画かわからなくなるだろうなというのが、脚本チームの共通認識として芽生えました。お二人の存在に引っ張られるように、脚本も軌道修正されていきましたね」

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