怖いのにやたら刺さる…“熱血すぎる先生”を演じた大泉洋の桁外れの演技力とは? 映画『かくかくしかじか』評価&考察レビュー

text by 近藤仁美

永野芽郁×大泉洋が演じる、凸凹師弟のぶつかり合いと絆が胸を打つ。東村アキコの実体験をもとにした映画『かくかくしかじか』が全国の映画館で公開中だ。今回は、涙と笑いが交錯する“ものづくり”青春譚の魅力を紐解くレビューをお届けする。(文・近藤仁美)

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原作は東村アキコの名作コミック

『かくかくしかじか』
©東村アキコ/集英社 ©2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

 5月16日公開の映画『かくかくしかじか』は、『海月姫』『東京タラレバ娘』などで知られる漫画家・東村アキコと、その恩師の実話に基づく作品だ。メガホンを取ったのは、星野源の『恋』のミュージックビデオや映画『地獄の花園』の監督で知られる関和亮。東村をモデルとする林明子を演じたのは永野芽郁、恩師・日高健三役を務めたのは大泉洋である。映画と同名の原作は、2015年に「マンガ大賞」を受賞した。

 高校生の明子は、漫画家を夢見つつもサボり癖があるお調子者だ。周囲に画才をほめられ、井の中の蛙のまま美大を受験しようと考えたが、それまで受験対策などしておらず、困ってしまう。そこで、同じく美大を目指す同級生のツテで絵画教室に通うことになったのだが、ついた先生がとんでもなかった……!

 なんせ、絵筆どころか竹刀を手にしている。その指導はかなりのスパルタで、生徒に本気で怒り、妥協がない。早々に鼻柱をへし折られた明子は、厳しいけれど嘘がない先生のもとで修業し、どうにか金沢の大学に滑り込んだ。

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