卓抜なギャグセンスと鑑賞後の余韻が素晴らしい

『かくかくしかじか』
©東村アキコ/集英社 ©2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

 なお、明子と先生といえば、作中では師弟ともによくジャージを着ている。これは示し合わせたわけではなく、各々がそれぞれの都合で身に着けていたもののようだが、鑑賞者からすると、いつしかジャージがふたりのユニフォームのように見えてくる。加えて、東村のファンにとっては、作品に出てくる自画像がしばしばジャージ姿で描かれるのも周知の事実だ。そうした共通点が、どこか彼女の恩師がいまも息づいている証のような気がして、部外者ながら勝手にうれしく思った。

 また、本作は、映画公式サイトにあるとおり「涙あふれる切ない実話」だ。しかし、脚本を東村本人が手掛けていることもあってか特有のギャグセンスが発揮され、それらが物語に明るさをもたらしている。鑑賞後は、なぜか大切な人たちに連絡をとりたくなる。いまのうちに伝えておきたい言葉やもう届ける術のない想いが去来し、胸が締め付けられると同時に温かくなる良作である。

【著者プロフィール:近藤仁美】

クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。国際賞「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『クイズ作家のすごい思考法』『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』などがある。

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