大泉洋を見て元教え子が号泣…「黒歴史」を包み隠さず描いた東村アキコの後悔とは? 映画『かくかくしかじか』考察&評価

text by 苫とり子

永野芽郁×大泉洋が主演を務める、現在公開中の映画『かくかくしかじか』。本作は、「東京タラレバ娘」や「海月姫」などのヒット作を手がけてきた人気漫画家・東村アキコの9年間にわたる恩師との実話をもとにした物語。今回は、東村アキコファン目線で、本作の魅力を徹底解説する。(文・苫とり子)

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自分を見つめ直せる東村アキコ漫画

『かくかくしかじか』
©東村アキコ/集英社 ©2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会

 東村アキコの漫画と出会ったのはもう20年近く前。伯母が買ってきてくれた「きせかえユカちゃん」を読み、当時平成女児だった私は洗練されたオシャレな絵柄に衝撃を受けた。本編はもちろん、あとがきで描かれている作者の父・健一のエピソードが面白くてゲラゲラ笑ったのを覚えている(のちにこれを元にした「ひまわりっ 〜健一レジェンド〜」が生まれた)。

 高校生の時は「海月姫」にどハマりし、のんと菅田将暉で実写映画化されるや否や迷わず劇場に足を運んだ。人生迷走中だった大学生活は「東京タラレバ娘」に何度救われたか分からない。アラサー独身女性の悲喜こもごもを描いた物語にみっともなくてもがむしゃらに生きていこうと思わされた。

 そして、「東村アキコが好きなら、これ読んだ方がいいよ」と大学の先輩に薦められて手に取ったのが、このたび実写映画化された「かくかくしかじか」だ。

 東村自ら綴った9年間にわたる恩師との実話で、映画を観たら初めて原作を読んだ時の感覚が蘇ってきた。くすりと笑えるシーンもありながら、終盤はボロ泣き。胸が引き裂かれるように痛い。こんなにも痛いのは、主人公がとっくに蓋をした若い時の自分の愚かさを見せてくるからだ。

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