カンヌで得た刺激と今後の展望

田中未来監督【写真:林瑞絵】
田中未来監督【写真:林瑞絵】

ーータイトルの意味は?

「大人になっても中身は成熟していない『身熟な青年たち』という意図で付けています。『ジンジャー』は『ジンジャーエール』などから来る青春の感じと、ジンジャークッキーなどの崩れやすく不安定なイメージから、なんとなく語感も良いので私が選びました」

ーーカンヌ映画祭の印象と、今後の影響は?

「お祭りのようだと聞いていた通り、すごくパワフルだと思いました。同じLa Cinefに参加した監督の方々とも話しましたが、やはりエネルギーに満ち溢れていて、圧倒されました。

昨日はコンペ作品の『Fuori』(マリオ・マルトーネ監督)をリュミエール劇場で見ました。登壇した監督や役者さんが皆自信に満ち溢れていて、大歓声のなか堂々とされていました。今は自分に足りないところも多いと感じていますが、いつか自分もカンヌであの大歓声を受け、堂々と立っていられるようになりたいと強く思いました」

ーー目標にしたいイメージが見えたか?

「とても見えました。今後撮る作品で、またカンヌに行けるといいなと思いました」

ーー今回、シネフォンダシオン出身の早川千絵監督がコンペ部門だが、どう見ているか。

「同じEMBUゼミナール出身の方でもあり、とても心強い先輩だと思ってます。カンヌでは お話もさせて頂き、右も左も分からないなかで色々なことを教えてくださいました。早川さんの背中を追えたら良いなと思っています。」

ーー次の長編映画について。

「企画・脚本が決まっています。次に撮る長編映画のテーマは「他者を想像すること」です。多くの人が自分の経験則でしか相手を推し量ることができず、人間関係の問題や齟齬が生まれます。他者を想像することはすごく難しいけれど、想像しようと思う姿勢こそが、人間関係を良好にするのではないでしょうか。そういったメッセージを多くの人に受け取ってもらえるような作品を撮りたいです」

【著者:林瑞絵プロフィール】

在仏映画ジャーナリスト。北海道札幌市出身。映画会社で宣伝担当を経て渡仏。パリを拠点に欧州の文化・社会について取材、執筆。海外映画祭取材、映画人インタビュー、映画パンフ執筆など。現在は朝日新聞、日経新聞の映画評メンバー。著書に仏映画製作事情を追った『フランス映画どこへ行く』(キネマ旬報映画本大賞7位)、日仏子育て比較エッセイ『パリの子育て・親育て』(ともに花伝社)がある。@mizueparis

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【了】

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