「家族のために自分ができることをやりたい」
チカの葛藤をMEGUMIが分析
―――チカは豪太(風間俊介)と出会った頃、彼の才能に惹かれ、豪太のことが大好きだったはずなのに、一体どこで気持ちが変わってしまったのだろうと思って観ていました。その点について、MEGUMIさんはどう解釈されていますか?
「気がついたらこうなってしまった……というのが正直なところです。豪太がダメ男になってしまったのは、自分にも責任があるとチカは思っているし、後悔の念があるんですよね。彼女は“もっとやれることがあるんじゃないか”と思っている。だから一緒にいるんです。
豪太からお願いされて、毎回、『ウザイ!』とか『風俗行きなよ』とかバシッと断るけど、チカは彼のことを無視はしない。本当に嫌だったら無視すると思うんですよ。でもちゃんと豪太と向き合うということは、家族のために自分ができることをやりたいという気持ちがあるんだと思います」
―――確かにそうですね。チカは豪太の仕事を手伝うし、惜しみなくサポートしていますよね。
「でもやってあげたり、口を出しすぎたりするから、豪太はチカを頼っちゃうし、物事を全うしなくなっちゃったのかなとも思いましたね」
―――豪太にはキツイ口調のチカですが、息子に対してはとてもやさしくていい母親ですね。夫と息子への態度の違いなど、どのようなことを意識して演じていたのでしょうか?
「息子に対しても厳しい母では、この作品を見てくださる人にとって“ずっと怖い人”になってしまい、それはチカ本来のキャラクターから離れてしまうと思いました。愛情深い人であることを伝えるためにも、息子に対しては柔らかい態度で接しようと。私にも好き過ぎて苦しいくらい大切な息子がいるので、そんな息子への愛情をチカに落とし込んで、表現したいと思いました」
―――この作品の柳田家は、実際に足立監督のご自宅で撮影されていますよね。とても珍しいことだと思いますが、セットではなく監督の家での撮影はいかがでしたか?
「監督の自宅が撮影場所なんて初めての経験でした。しかも足立監督のリアルな物語を監督自身が演出をして、撮影場所には奥様もいらっしゃるんです。撮影をしていたら、お子さんが忘れ物を取りに来たりして(笑)。とても不思議な気持ちで、ドキュメンタリー作品を撮っているようでしたね」
―――実在する主人公の家で撮影をするというのは、俳優としては演じやすいものなのでしょうか?
「作品の世界にスッと入っていける良さはありましたし、とても貴重な経験をさせていただきました。ただ奥様本人が目の前にいる中で、その役を演じることについては 『こんなキツい言い方しちゃっていいのかな…』という申し訳ない気持ちになったり“ご本人を前にして私はいったい何をやっているんだろう”と戸惑ったりもしました。こういう経験は最初で最後かもしれません」