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映画『Winny ウィニー』は面白い? 東出昌大主演の問題作を徹底解説。忖度なしガチレビュー《あらすじ キャスト 評価》

text by 寺島武志

東出昌大主演×松本優作監督の映画『Winny』が、3月10日から全国公開される。ネット掲示板「2ちゃんねる」を発端に、社会問題へと発展した実際のサイバー事件を基にした映画は、どのような作品に仕上がったのか? 今回は、ファイル共有ソフト開発者の闘いをリアリティたっぷりに映像化した本作のレビューをお届けする。(文・寺島武志)

政治も介入!?
天才エンジニアはなぜwinny事件の容疑者になったのか

C2023映画Winny製作委員会

本作の主人公は、31歳の若さで、たった一人で、のちのブロックチェーン技術へと繋がるP2P技術を生み出した天才ソフトウェアエンジニアにして、東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手でもある金子勇氏(東出昌大)。

彼がファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」のプロトタイプ版をネット掲示板「2ちゃんねる」に公開したことによって、著作権法違反幇助容疑で逮捕されてから無罪を勝ち取るまでの7年を追った、実話に基づくストーリーだ。

ウィニーは、ユーザー同士が直接データのやりとりができる革新的なシステムである一方で、大量の映画やゲーム、音楽などが違法にアップロードされ、それらをダウンロードする若者が続出したことから、次第に社会問題化。さらに、その特性を悪用したウイルスも流行した。

ウイルス感染はデータの流出を引き起こし、警察や自衛隊の内部資料、企業の顧客情報や個人所有のファイルなどの漏洩が相次いだことで、当時の安倍官房長官が会見で「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、パソコンでウィニーを使わないこと」と呼びかける事態となった。

違法コピーした者たちが次々と逮捕される中、開発者の金子氏も2004年に京都府警に逮捕される。

物語の中で登場する金子氏の少年時代のシーンには、懐かしのパソコン雑誌「マイコンBASICマガジン」や、当時、国内産パソコンの最上位の機種であった「PC-8001」が映し出される。そこで金子少年は、書店と電機店を往復しながらプログラミングの面白さを知ることになるのだった。

金子氏と同年代の筆者は、この回想シーンを見て、中学時代に初めてパソコンを手に入れ「ベーマガ」とも呼ばれていた「マイコンBASICマガジン」を参考に、簡単なゲームを作っては自己満足に浸っていた記憶が蘇った。

この世代は、少年時代にパソコンを手にできる環境にあり、学生時代あるいは、社会に出て間もない時期に「Windows95」が登場し、さらにインターネットの前身である「パソコン通信」が可能となった、いわゆる「デジタルネイティブX世代」と呼ばれている。

アナログからデジタルへの移り変わりを肌感覚で経験し、それに伴って価値観や常識も変化させなければならないことを余儀なくされた世代でもあるのだ。

そんな世代であり、作中で「プログラミングは僕にとって“表現”」と自任している金子氏が、その天才的な才能を発揮してウィニーを開発し、オープンソースとして公開したことは、至って自然な行動ともいえるのではないだろうか。

百歩譲って金子氏に落ち度があるのだとすれば、ウィニーを公開することによって、その主な使い道が違法ダウンロードになってしまうことが予見できなかったことだろう。今では常識ではあるが、ネット社会では「性善説」は通用しない。

金子氏は、あまりにも純粋過ぎたのだ。

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