「役者を続けてこられた理由は“楽しさ”」映画『君がトクベツ』畑芽育、1歳から続けてきた役者業への情熱を語る。インタビュー

text by 斎藤香

幸田もも子原作の人気コミック「君がトクベツ」(集英社マーガレットコミックス刊)が実写映画化され、6月20日に公開される。今回は、本作のヒロイン・畑芽育さんにインタビューを敢行。主人公・若梅さほ子の役作りや、共演の大橋和也さんについて、さらに1歳から始めた芸能界のキャリアまで幅広く語ってもらった。(取材・文:斎藤香)

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「コミカルなお芝居を120%振り切って演じた」
原作のヒロイン像から得たヒント

畑芽育 写真:wakaco
畑芽育 写真:wakaco

―――畑さんは、映画『君がトクベツ』の原作者・幸田もも子さんの漫画が大好きだそうですが、出演オファーがあったときの気持ちを教えてください。

「これまでも少女漫画の実写化作品に関わらせていただくことが多く、出演するたびに胸が躍る瞬間がたくさんありましたが、私が大好きな幸田もも子先生の原作漫画で主演を務めさせていただけるということがとてもうれしかったのです。加えて、推し活をしているアイドルファンの方が一度は想像するようなシチュエーションで、とても夢のある物語なので、こんな素敵な世界の中でお芝居ができるという喜びがありました」

―――原作漫画は演技の参考にしましたか?

「原作からたくさんヒントをいただきました。今まであまり表現してこなかったコミカルなお芝居を120%振り切って演じられたと思います。もも子先生は撮影現場に何度か足を運んでくださったので、少し緊張したり、心配したりもしたのですが、『素敵だったよ』という言葉をいただけたので、安心して臨むことができました」

―――さほ子は、一見ユニークな女の子ですが、とても共感度の高いキャラクターだと思います。畑さんが思うさほ子の魅力について教えてください。

「自分の根底にあるものを変えたり、生活をガラリと変えたりすることは難しいことだと思います。でもさほ子ちゃんはアイドルグループの“LiKE LEGEND”の皇太くんに出会って、心が動かされ、いろいろなことが目まぐるしく変わっていく中で、その変化を受け止め、自分を変える努力をします。その真っ直ぐな一生懸命さが魅力だと思いましたし、とても愛らしくて、演じながら応援したくなる女の子でした」

―――松田礼人監督からは、どのような演出がありましたか?

「さほ子は、アイドルや芸能界に対して少し冷めた目線を持つ、どこかひねくれた一面もあるけれど、ごく普通の女の子です。たとえば、自分の店のお弁当をテレビ局に届けるといった場面は、彼女にとってまさに“異世界”に足を踏み入れるような体験。そのため監督からは、『芸能の世界に初めて触れる女の子が見せる、素直で新鮮なリアクションを大切にしてほしい』といった演出の指示がありました。

私は幼い頃から芸能界にいるので、この環境に慣れている部分ものですが、『さほ子ちゃんだったらどんなリアクションをするだろう』と常に想像しながら撮影に臨みました。初めて見る芸能界のキラキラした部分やアイドルである皇太くんの抱える悩みや苦しさを目の当たりにしたときの心情をどう表現するかということを、監督と話し合いました」

「大橋和也さん=皇太としか思えなかった」
初共演でも息ぴったり、大橋和也との信頼関係

畑芽育 写真:wakaco
畑芽育 写真:wakaco

―――桐谷皇太を演じる大橋和也さんとは初共演だと思いますが、共演した感想を教えてください。

「大橋さんは、テレビで見たままの方でした。朝から晩まで寒い環境での撮影が多かったのですが、大変な撮影を乗り越えた戦友のような存在です」

―――皇太と大橋さんイメージがそのままだと思ったのですが、畑さんはどう思われました?

「私も、皇太=大橋和也さんと思いました。完成披露試写会に私の家族が観に来てくれたのですが、映画が終わったあと『皇太は大橋さんそのものだね』と話していました(笑)」

―――撮影では、役作りやお芝居について、大橋さんと相談して作り上げていったという話を聞いたのですが、具体的にどのような相談をしたのでしょうか?

「私もまだまだお芝居について学ぶことがたくさんあるのですが、演技レッスンを受けてきたので、そこで学んだことを共有しようと思いました。

大橋さんはとても勉強熱心な方でたくさん質問を投げかけてくださったので、台本の読み解き方、演技のアプローチの仕方など、私がレッスンで教わり実践していることをお話ししました。大橋さんも私も『いい作品を作りたい!』という目標は一緒ですから、監督も一緒にお芝居について、たくさん話し合い作り上げていきました」

畑芽育が語る“オンオフ下手”な素顔

畑芽育 写真:wakaco
畑芽育 写真:wakaco

―――畑さんから見て、桐谷皇太というキャラクターの魅力はどこだと思いますか?

「私は皇太くんを見ていると心配になってしまいます。映画では皇太くんが抱える苦しみが描かれているけれど、応援しているファンの人たちはそんな事情は知る由もない。それゆえにミステリアスな存在に見えるのかもしれないのですが、とにかく皇太くんはアイドルとして、ずっとスイッチが入った状態です。

“彼の人生=アイドル”だからこそ、多くのファンに応援してもらえる存在になったのかもしれないけれど、『肩の力を抜いていいんだよ』と思ってしまって。皇太くんは人間ができすぎていると思いました」

―――畑さんはスイッチのオンオフはできる方ですか?

「私もスイッチのオンオフは下手な方かもしれませんが、自分に正直なタイプなので、仕事以外では気を抜いてしまうこともあります。皇太くんほどずっとスイッチオンではないですね」

―――役を引きずったりしないタイプなんですね。

「作品によるかもしれません。等身大の役を演じるときは、自分に近すぎてスイッチのオンオフができなかったり、2つの作品を同時期に演じているときは『あれ、私、何をしているんだろう?』と環境の変化に適応できなかったりすることもあります」

―――状況を見ながら自分の立ち位置を確認しないと、わからなくなっちゃいますね。

「芸能界は、毎日が目まぐるしく変わっていく世界。作品が変わるたびにお仕事をする現場が変わるので、ときどき『不思議な仕事だな』と思うこともあります。それでも私はお芝居をすることが楽しいし、映像作品に魅力を感じているひとりの俳優として『皆さんに作品を届けたい』という気持ちは、どの作品に関わっていても変わりません。そこは芯を持ってできていると思います」

続けてこられた理由は“楽しさ”

畑芽育 写真:wakaco
畑芽育 写真:wakaco

―――キャリアについて伺いたいのですが、1歳からこの世界でお仕事をされているとのことですが、俳優業を意識し始めたのはいつ頃ですか?

「両親も私がここまで続けるとは予想していなかったと思います。思い出作りのような気持ちでスタートさせたのではないかと思いますし、私自身もこんなに続くと思っていませんでした。やめようかと思ったこともありますが、キッズモデルを経て、お芝居の練習をするようになってから楽しくなり、徐々に“自分の仕事”という意識が芽生えていった気がします。

私は習い事をしても長続きしないことが多かったのですが、俳優の仕事だけは休まずに突っ走ってきたので、自分がやってきたことを信じて、これからも突き進んでいきたいです」

―――お芝居が楽しいとおっしゃっていますが、お芝居の楽しさとは?

「認めてもらえる感じがします。お芝居を通して表舞台に立ち、エンターテイメントを届けることにやりがいを感じます。また撮影の現場で自分で工夫したことをスタッフの方が面白がってくれたり、共演の俳優さんがアドリブで返してくれたり、現場で生まれるライブ感もすごくワクワクします。そうやって皆さんと作り上げた作品を観てくださった方から良かったというコメントをいただくと、またワクワクしますね」

―――仕事でワクワクできるのは素敵ですね。

「苦しいことも大変なことも、すべてが芝居の糧になっていくので、そういう点はお芝居の強みであり、俳優の魅力でもあると感じています」

―――最後に『君がトクベツ』を観た感想と畑さんのアピールポイントをお願いします。

「完成した! とホッとしたのと同時に、撮影後に加えられたCGのシーンの仕上がりを観て、監督の頭の中を見たような気持ちになりました。本当に大好きな作品なので、たくさんの方に観ていただきたいです」

(取材・文:斎藤香)

【作品概要】

『君がトクベツ』
2025年6月20日(金)より全国ロードショー
原作:「君がトクベツ」幸田もも子(集英社マーガレットコミックス刊)
出演:畑芽育 大橋和也
木村慧人(FANTASTICS) 矢吹奈子 山中柔太朗(M!LK) 大久保波留(DXTEEN) NAOYA(MAZZEL) 星乃夢奈/遠藤憲一/佐藤大樹(FANTASTICS)
監督:松田礼人

脚本:おかざきさとこ
楽曲コンセプト:渡辺淳之介

主題歌:LiKE LEGEND「YOU ARE SPECiAL」 配給:ギャガ
製作:「君がトクベツ」製作委員会
制作プロダクション:TBSスパークル
© 幸田もも子/集英社・映画「君がトクベツ」製作委員会

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【了】

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