『名探偵コナン』初代プロデューサーが解説『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』評価レビュー
映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』が公開中だ。不敵な笑みとともにルパンが帰ってきた。2D劇場アニメとして約30年ぶりの新作『不死身の血族』は、シリーズの総決算にして最も“濃い”一本。『名探偵コナン』『犬夜叉』『シティーハンター』など、日本のアニメ史を彩る数々の作品で企画・プロデュースを担当してきた諏訪道彦さんによるレビューをお届けする。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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アニメ『ルパン三世』シリーズの歴史を振り返る
1967年にモンキー・パンチ先生(=MP先生)によって生み出され、1971年のTVアニメ放送以来、世代を超えて愛され続けてきた『ルパン三世』シリーズ。最初のTVシリーズはその12年後にボクが入社する事になる、よみうりテレビで初放送されてます。そんな「ルパン三世」とボクとのつながりを振り返ってみます。
ルパンアニメを放送当時小学生だったボクはほとんど意識せず、高校生になってから漫画アクション誌に連載されていたMP先生のクールな連載漫画に夢中になります。その頃から漫画の“読みオタ”だったボクをルパンアニメに目覚めさせたのが、大学生の時に大阪は「戎橋劇場」で観た、ジャッキー・チェン『キャノンボール』と併映の『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)でした。
それから再放送された『ルパン三世』『ルパン三世part 2』を貪るように見て、22歳でよみうりテレビに入社。その1年目にはTVシリーズ『ルパン三世partⅢ』の全国放送が始まります。
そして2009年には当時としては前代未聞のコラボTVスペシャル『ルパン三世vs名探偵コナン』そして2013年には『ルパン三世vs名探偵コナンTHE MOVIE』を企画プロデュースしました。
『ルパン三世』のキャラクターの魅力
ボクの人生において縁がありまくりの『ルパン三世』。その劇場版最新作が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメとして帰ってくる、とあればこれはもう超大歓迎で、踊るような気持ちで試写を観に行かせていただきました。
『ルパン三世』のポイントと言えばまず絶対にルパン達のキャラクター設定でしょう。『ドラえもん』の5人組や『名探偵コナン』における5人の少年探偵団よりも歴史のある、ルパン・次元・五右衛門・不二子・銭形のオトナな5人チーム。さらに、世代交代されてもイメージを少しも損なっていない名声優たちの素晴らしさにも触れておくべきでしょう。
観客は、5人のキャラクター像や交差するベクトルが見えてくるとルパンワールドにハマるしかない。『ルパン三世』の歴史をずっと見てきたボクの世代も含めて、多くの日本人が、ルパンたちが今度は何をしでかしてくれるのか、新たな行動から目が離せないと思います。
しかしながらこのレビューのミッションでありますが、ミステリー物の『名探偵コナン』同様、内容の開示を一部分に留めた上で、作品の面白さをお伝えするのはなかなか難しいです。
ネタバレ厳禁なのは当然ですが、この映画の肌触りを伝えることさえも難しい。ここでは今作の監督であり、『次元大介の墓標』『血煙の石川五ェ門』『峰不二子の嘘』『銭形と2人のルパン』など、ルパン三世の劇場版スピンオフ作品の監督も務められた小池健さんが、「あくまでシリーズ全体の完結編として、大きな意味を込めた」ことをお伝えしておきます。
原点回帰を思わせるキャラクターデザインにも注目
物語の舞台はバミューダ海域にある世界地図に存在しない謎の孤島。まずこの一文を見て、これほど『ルパン三世』の世界観にピッタリな設定はないと思いました。だってルパンも敵もそこでホントに何やっても良いのだから。今までのルパンを知る人たちなら、余計に想像を超えた動きやアイデア、さらには破天荒なアクションを期待しようものでしょう。
ところで今回リリースされているルパン三世をはじめとしたキャラクターデザインは、ボクの世代としてはMP先生のそれを想起せずにはいられない懐かしいもの。MP先生が初期に描かれた漫画キャラが、センスにあふれ、ある種シンプルなものだっただけに、その後のアニメ『ルパン三世』のキャラクタービジュアルはさまざまな変遷を遂げてきました。
それが時代感と共にひとまわりして、今回の『不死身の血族』に帰着していると言えるかもしれません。主題歌のB‘z「The ⅢRD Eye」のゴージャスでゴキゲンなサウンドも相まって、コレが令和の今のトンがった『ルパン三世』なんだ、と身体全体で受け止めることができた映画でした。
【作品情報】
映画タイトル:『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』
公開日:6月27日(金)全国公開
コピーライト:原作:モンキー・パンチ ©TMS
配給:TOHO NEXT
スタッフ
原作:モンキー・パンチ
監督:小池健
脚本:高橋悠也
音楽:ジェイムス下地
クリエイティブ・アドバイザー:石井克人
主題歌:B’z 「The IIIRD Eye」
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
製作・著作:トムス・エンタテインメント
配給:TOHO NEXT
キャスト
声の出演:栗田貫一 大塚明夫 浪川大輔 沢城みゆき 山寺宏一
声のゲスト出演:片岡愛之助 森川葵 空気階段
【諏訪道彦 プロフィール】
1959年愛知県生まれ。「シティーハンター」「名探偵コナン」「犬夜叉」など企画・プロデュース。劇場版「名探偵コナン」シリーズは23作目「根性の拳」まで企画・プロデュース。2023年10月「株式会社アスハPP」設立。現在は引き続き新作アニメーションの企画プロデュース業を行う。現在大阪芸術大学芸術計画学科教授。
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【了】