「『AIを騙す』発想は面白い。キャラと演出はあと一歩」近藤仁美(クイズ作家)|映画『キャンドルスティック』マルチレビュー
公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビューがスタート! 記念すべき第1回は、日本と台湾の共同制作による阿部寛主演作『キャンドルスティック』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。(文・編集部)
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「AIを騙す」発想は面白い。キャラと演出はあと一歩
近藤仁美(クイズ作家)
【採点評価】2・5点
AIを騙すという発想は面白く、FXという素材も現代ならでは。ただし、各登場人物の行動の理由が薄味で、筋は追えるが感情移入は難しい。特に気になったのは、数字が色で見える「共感覚」が、味付け程度にしか機能しなかったことだ。それでいて、必然性があるとはいえない状態のまま、大事な場面で再び出てきてしまう。結果、直面した問題を限られた人しか使えない特殊能力で解決した印象となり、やや置いてきぼりの感があった。また、天才が「天才」の一言で片づけられ、特段掘り下げられなかったのも心残りだ。とはいえ、俳優陣の演技はいずれも魅力的。なかでもサヘル・ローズ演じる施設職員は、平生の慈愛と窮地での啖呵のギャップが見事であった。
【著者プロフィール 近藤仁美】
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。国際賞「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『クイズ作家のすごい思考法』『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』などがある。
【了】