「たのしいアクションシーンを撮りたい」
前作よりもパワーアップした殺陣について語る
―――撮影スタイルについて伺います。1作目では、喧嘩をした“ちさと”と“まひろ”が仲直りをするシーンで切り返し(カットバック)を使用されています。それに対し、今作では両者がカットバックで映されるシーンがほとんどありません。
「そうですね。画面構成においても、カメラマンの伊集守忠さんと相談しながら、敵との対比を意識しました。終盤にかけて、“挑戦者”である悠里と真琴をフィーチャーするシーンではカットバックを増やし、男の不安や熱量をクローズアップの連続で表現しました。一方、“ちさと”と“まひろ”は、2人で1つであり、どんなことがあってもブレない存在です。その辺りを考慮して、“ちさと”と“まひろ”は基本的にはツーショットで捉えることにしました」
―――“ちさと”と“まひろ”のツーショットは、カットの持続が長くても、飽きずに見てしまいます。
「脚本を書いている時は、2人の仲間である田坂(水石亜飛夢)や、宮内(中井友望)、須佐野(飛永翼)をもっと登場させたいと思っていたんですよ。それこそ『ワイルド・スピード』シリーズのように、チームのお話にしても良いかなと思ったくらい。
でも、書いていると2人のやり取りだけで十分に面白くて、他の要素を組み入れようとしても、『これ要らないな』と感じることが多かったんです。一方、“ちさと”と“まひろ”のやり取りだけで成立させる力があるからこそ、彼女たちのいない、3人だけのシーンが際立つという側面もあると思います」
―――カット割りを構成するのは、脚本を書く時ですか? それとも現場でお芝居を見て決めるのでしょうか?
「プロットを書く段階でカット割りが頭の中に浮かびます。特に、悠里と真琴がアパートのドアを開けると敵がいて、カットが切り替わると、たじろぐ2人がいる冒頭のシーンなどはそうですね。また、“ちさと”と“まひろ”が初めて登場するシーンは、極端な顔のクローズアップにしたい、と明確なイメージがありました」
―――前作よりもパワーアップしたアクションシーンにも魅了されました。効率性を重視したアクションではなく、往年の香港映画を想起させる様式美に富んだアクションですね。
「前作では、『女の子が大男に勝つにはどうしたらいいか』というロジックに基づいてアクションを組み立てたのですが、今作では、エクスキューズなしに、よりストレートに“まひろ”と“ちさと”の強さを出すという意図を込めました。
日本映画では、本物の殺し合いと言いますか、アクションシーンにリアリティを重視する傾向があるのですが、僕はリアリティよりもリズムを重視したい。ダンスのようにアクションシーンを撮りたいという気持ちが本作ではありました。
ちなみに、今回、“まひろ”役の伊澤彩織さんからは『バスター・キートンのようなアクション』がやりたい、というリクエストがあって、銀行強盗のシーンのアクションにはコメディ要素を入れました」