「声を録りながらキャラの成長を実感した」映画『ChaO』山里亮太&三宅健太がアフレコの裏側を語る。対談インタビュー
人間の青年・ステファンと人魚王国のお姫さま・チャオの愛の物語を描いた映画『ChaO』が、現在公開中。今回は、シー社長役の山里亮太さんと、ネプトゥーヌス国王役の三宅健太さんにインタビューを敢行。アフレコの舞台裏から、それぞれが演じたキャラクターへの思いまで、作品の魅力をたっぷり語ってもらった。(取材・文:ばやし)
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山里亮太、西野亮廣への“リベンジ”も込めた初参加エピソード
―――本作は、人間の青年・ステファンと人魚王国のお姫さま・チャオのハートフルな恋物語が描かれています。本作への出演が決まった際の心境を教えてください。
三宅健太(以下、三宅)「STUDIO4℃さんには、『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』(2012、以下『ベルセルク』)以来、久々にお声がけいただいたんです。『ベルセルク』に参加させてもらったときも『すごい作品を作るチームだなぁ』と凄まじい熱量を感じていたんですが、今回はまた世界観がガラッと変わっていて。近代ポップアートみたいな絵柄の作品だったので、また別の方向から僕をワクワクさせてくれるんだと感動しました」
山里亮太(以下、山里)「STUDIO4℃さんの作品に自分がお声がけいただけるなんてという驚きがありました。本当にすばらしい作品をすばらしい仲間で作るチームだと聞いていたので、そこに入れてもらえたのが嬉しかったですね。あとは、憎き西野先生が『えんとつ町のプペル』(2020)で大きな金星を上げていたので(笑)。そのときの忸怩たる想いがあったので、西野先生に一矢報いられてよかったです」
―――そこの関係性もあったんですね(笑)。今回、山里さんはSTUDIO4℃制作の作品に初めての出演となりますが、元々どのような印象を抱いていましたか?
山里「僕が言うのも何ですが…STUDIO4℃制作の『鉄コン筋クリート』(2006)を観たとき、こういう作品を作ることができるのは、本当に選ばれたすごい人たちだけなんだなと感じて」
―――『鉄コン筋クリート』では奥様の蒼井優さんが声優を務められていますよね。作品自体は当時からご覧になっていましたか?
山里「結婚したから観たとかではなく、当時もすごく話題になっていたので。STUDIO4℃と言えば、それぐらいスペシャルなチームの象徴みたいな存在なんです。だから出演のお話がきたときは、そんなSTUDIO4℃に選ばれたんだと思って、すぐに『やるやるやる!』って言いました。もう純粋に嬉しい気持ちが大きかったですね」
三宅健太が意識した“上品な王様”の声づくり
―――『ChaO』で山里さんはステファンが働く会社の上司であるシー社長、三宅さんはチャオの父親で人魚王国の王であるネプトゥーヌス国王をそれぞれ演じられています。アフレコ中はどのような思いで演じられたのでしょうか?
山里「シー社長は独特だけど本当にいいキャラクターで、立ち振る舞いも演じていてすごく楽しかったです。声が入ったシーンを確認するたびに『わぁっ!』て喜んでいました」
三宅「シー社長はすごい表情豊かですよね」
山里「コメディタッチなシーンが多かったこともあって、収録は本当に楽しかったです」
―――シー社長はジェスチャーを交えたシーンも多くて、「声を当てるのが大変そうだな」と思いながら拝見していました。
三宅「本当に(山里さんが)達者だなと。コミカルに表情が動く描写を声で表現するのって最初は戸惑うと思いますが、まったく違和感がなくて。ちゃんとメリハリもつけてらっしゃったので、プロの目で観ても驚きました」
山里「本当にありがたいお言葉です…。でもやはり、メリハリをつけるということが1番難しかったですね」
三宅「これはぜひ本編を見ていただきたいです。山里さんにピッタリなんですよ」
―――三宅さんはネプトゥーヌス国王を演じるにあたって難しかった部分はありましたか?
三宅「悩んだのは、『どうやったら恐怖よりも彼の威厳と娘に対する愛情を出せるのか』ということです。ネプトゥーヌス国王は威厳があって、でも娘のことを本当に愛しているキャラクターなんです。だから、デフォルメの効いた強面ではあるんですけど、今回、声に関してはあまりゴツく作らないように意識しました。ちょっと上品にやるくらいのほうが、王様感が伝わるかなと。
あとは、絵の説得力が強いので、『声で説明しなくても十分伝わるだろう』と考えて、少し色調を淡く演じました。実際、セリフに関しては特に大きいオーダーはなかったのですが、意外に息遣いの指示が多かったです」
―――息遣いというと?
三宅「たとえば『ふんっ!』や『くっ!』という息遣いにも、娘に対する深い愛情を込めてほしいと言われて。でも、そういう指示こそ難しいんですよね。言葉じゃないから。
結婚式でチャオが父親への思いを語っているときに、『んんっ』て顔をしかめるシーンがあるんですが、この息にも娘に対する思いを入れ込んでほしいと。今回の役柄では、語らずとも息で伝える感情表現を求められる場面が多かったですね」
憧れのキャラクター像を演じられた喜び
―――お2人とも声と演じた役柄がとてもマッチしていたように感じました。それぞれが演じたキャラクターについて、ご自身と重なる部分はありましたか?
山里「シー社長は僕にとって昔から憧れていたキャラクター像だったんです。したたかで軽薄な感じだけど、実は…みたいな。誰しもが一度は憧れるムーブじゃないですか。まさにシー社長はそのパターンだったので、彼を演じられて嬉しかったですね」
―――シー社長は本当に憎めないキャラクターですよね。ネプトゥーヌス国王の行動は、三宅さんにはどのように映っていましたか?
三宅「実は人生観においては共通点がほぼないんですよね。彼は人魚王国の王様ですから(笑)。だから、あえて自身を役柄に投影させて、こちらから寄せていきました。たとえば、ネプトゥーヌス国王は伝えたいことがあるんだけど、どう言えばいいのかわからないときに『んんっ』って言葉を詰まらせるんです。そこで、彼にも意外とシャイなところがあるのかもと思って、言葉の悩み方に日常生活の自分を重ねていました」
―――シー社長はステファン、ネプトゥーヌス国王はチャオと特に関係性が深いキャラクターですが、おお2人から見てステファンとチャオはどのような存在でしたか?
三宅「本当にチャオはかわいい! 山田杏奈さんのお芝居もまたほんわかしていて、すごく無邪気な部分もあって。だから、僕はすごく父としての愛情が沸くんですよ。すると、必然的にステファンに対するヘイトが溜まっていく(笑)」
―――かなり役に入り込んで演じていたんですね。
三宅「自然とそうなっちゃいましたね。本当に手塩にかけて優しく育てたんだろうなって…。結婚式のスピーチでチャオが『わがままな私ですが…』と話し始めるセリフがあるんですけど、本当は天真爛漫なだけで、そんなわがままじゃないんですよ。でも、あえて自分で打ち明けるのを聞いて『本当にいい子だなぁ』としみじみ思いました」
自宅での“声の引き出し”談義
―――シー社長から見たステファンはどのような存在でしたか?
山里「ステファンと最初に接しているときは、自分たちの会社に利益を出すような優秀な社員だと認識していなかったと思うんです。でも、あるきっかけで彼が有益な存在になるとわかってから、シー社長にとっては必要不可欠な人材になっていく…ステファンの声も、どんどん成長した人間の声になってくるんです。声を撮っているときは、彼の成長を実感していましたね」
―――シー社長自身も物語が進むなかで、ステファンに対する呼び方がコロコロと変わっていきます。
山里「あれはもう嫌らしいです(笑)」
三宅「でも、すごい切り替えですよね。お芝居もそうですけど、『ステファン』って呼んでいたのに突然さん付けで呼ぶところとか」
―――呼び方を変えるときは、意識して声色も変えていましたか?
山里「ちょっと媚びている感じを出そうとは思っていましたけど、それぐらいです。細かく変えられるほどの技術はまだないので…」
三宅「変えられていましたよ! 大丈夫です」
山里「家では、どうやら僕の声の引き出しは“大”と“小”しかないんじゃないかって話していたので、安心しました(笑)」
混沌の時代に響く、人情とピュアな心
―――本作はファンタジー作品でありながら、どこか現実を反映しているような描写もあります。独創的な世界観で描かれる映画の見どころを聞かせてください。
山里「すごくぶっ飛んだ設定なんですけど、まったく違和感を抱くことがなく、むしろどんどんその世界に入っていくことができる。本当にその街の住人として、この世界で繰り広げられている出来事を体感できるような没入感のある作品だと思います。あとはとにかく絵が綺麗!」
三宅「アーティスティックな絵面なんですけど、実はすごくシンプルなことを伝えている作品だと思っています。近年、国内外を問わず落ち着かない日々が続いている中で、みんなが見たいであろう人情やピュアな部分をすごくストレートに訴えかけている。そこが魅力的なので、こんな時代だからこそ見てほしいですね」
―――最後にお2人から映画を楽しみにしている人たちにメッセージをお願いします!
山里「まるで絵本やおとぎ話のような内容ではあるんですけど、まっすぐに楽しめて、なおかつ新しい作品になっています。夏の暑い中ではありますが、映画では水の爽快感もあるので、ぜひ楽しみに来ていただければ嬉しいです」
三宅「本当にアニメというジャンルだけでは括れないすばらしい映画です。われわれ本業の声優だけでなく、豪華なタレントの方々も参加されていて、異種格闘技戦のようなお芝居のぶつかり合いによって独特なグルーヴ感も生まれています。ぜひ、この新鮮なグルーヴ感を楽しんでいただけたらなと」
【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
【作品情報】
タイトル:映画『ChaO』
公開日:2025年8月15日(金)Roadshow
声の出演:鈴鹿央士 山田杏奈
シシド・カフカ 梅原裕一郎 / 三宅健太 / 太田駿静 土屋アンナ
くっきー! 山里亮太
監督:⻘木康浩 キャラクターデザイン・総作画監督:小島大和 美術監督:滝口比呂志 音楽:村松崇継
アニメーション制作:STUDIO4°C
配給:東映
©2025「ChaO」製作委員会
公式サイト
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【了】