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芸人人生で培った緩急に富んだ演出に瞠目
“笑いと感動”がフュージョンした傑作

劇団ひとり『晴天の霹靂』(2014年)


出典:Amazon

監督:劇団ひとり
脚本:橋部敦子、劇団ひとり
原作:劇団ひとり
出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり

【作品内容】

売れないマジシャンの晴夫は、幼い頃に母に捨てられ、育ての父とも高校卒業以来、絶縁状態であった。そんなある日、晴夫は父の訃報を聞く。絶望した晴夫は、いきなり雷に打たれると、40年前の浅草にタイムスリップしていた。

そこで若い頃の父と母と出会い、同じく売れないマジシャンだった父とコンビを組むことになる。そんな中、晴夫は自身がどう生まれてきたのか、隠された秘密を知ることになる。

【注目ポイント】

監督を務めた劇団ひとり
監督を務めた劇団ひとりGetty Images

劇団ひとりは『陰日向に咲く』で作家デビュー。多彩な登場人物を描き分ける手腕が評価され、100万部を超える大ベストセラーに。同作は、2008年に岡田准一を主演に迎え映画化され大ヒットを記録した。

『晴天の霹靂』は彼の2作目の長編小説であり、初監督作品でもある。本作の魅力は、大泉洋演じる晴夫と晴夫の父を演じた劇団ひとりの、コントのような掛け合いが見事な点である。会話におけるふとした”間”の表現が絶妙なのだ。このあたりの演出は、芸人人生で培ったセンスが存分に活きている。

コメディパートが見事である点に加え、湿っぽい場面では、しっかりと泣かせてくれる。自分を捨てた母を恨んで生きてきた晴夫。物語は、晴夫が母の気持ち(どんな思いで自分を産んだのか)を知ることによって、感動の結末を迎える。演技で笑かされ、最後は脚本に泣かされる…。観客は、劇団ひとりの手の平で踊らされているような心地良い感覚を、たっぷりと享受することになるだろう。

「結局何だったの?」と、何がなんだかわからずに結末を迎えてしまう映画が溢れる中、映画を通して観客に考えてほしいことをクリアに伝えるのは簡単ではない。しかし、劇団ひとりは、初監督作品で見事にそれに成功している。

脚本が良いだけでも、役者が良いだけでも映画は成り立たない。コントのようなシーンでも成り立つのは、2人ともバラエティー番組で活躍してきたというバックボーンも大きいが、役者としてのスキルが高いことが前提である。それに加えて、自分が生まれてきたことの尊さや、自分が生きている意味を思い出す、心がじんわりとあったかくなる話になっている。ぜひ鑑賞してほしい一作だ。

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