「脳内イメージを高い純度で表現したい」神様を主人公にした会話劇。映画『謝肉祭まで』イリエナナコ監督独占インタビュー
400年に一度に行われる謝肉祭。個性豊かな3人の神様が集まり、生贄となる2人を選ぶべく話し合いを始めるのだが…。コピーライター、クリエイティブ・ディレクターとしても活躍する、映画監督のイリエナナコさんがメガホンをとった短編映画『謝肉祭まで』が4月14日(金)より公開される。今回は、イリエ監督に本作に込めた思いを伺った。(取材・文:山田剛志)
【イリエナナコ監督 プロフィール】
東京生まれ。現在はフリーランスとして活動。コピーライティング、クリエイティブディレクション、CMやコンテンツのプランニングなどの仕事と並行し、映画、絵と言葉の作品の展示などの作家活動を行っている。2016年まで広告会社に勤務。2020年ワンピースブランド「瞬殺の国のワンピース」スタート。監督作品に『愛しのダディー殺害計画』(2020)。2023年3月には初監督作品『触れッドペリー』が劇場公開された。
【映画『謝肉祭まで』あらすじ】
謝肉祭がやってくる。400年に一度の、謝肉祭がやってくる。人々の祭りは、神々の晴れ舞台。謝肉祭の7日前、3人の神は集められ、話し合いが始まった。3人のうち2人の神は、祭りの舞台で死なねばならぬ。それはしきたり。決まりごと。誰もが称える大きな名誉。さあ誰を選ぼうか。7日後には謝肉祭がやってくる。
3人の役者から声をかけられて製作を決意
萩尾望都の漫画がタイトルのヒントに
―――本作は、大山真絵子さん演じる「オドル神」、円井わんさん演じる「ワラウ神」、豊満亮さん演じる「ミル神」という3人の神様がメインキャラクターとなっています。まずは企画を立ち上げられた経緯を教えてください。
「2020年に、元々友人であった主演の3人から連絡をもらったのが始まりでした。当時は、新型コロナウイルスの影響で、映画の撮影や舞台の上演がほぼ全部ストップ。世の中全体の動きも停滞し、先行きの見えない不安に駆られる一方、私自身は『この期間にゆっくり脚本に専念できる』と悠長な気持ちも抱いていました。
そんな中、大山さん円井さんの2人と、豊満さんから、ほぼ同じタイミングで『なんかやろうよ』と声をかけてもらったんです。女性陣と豊満さんは知り合いではなかったのですが、これも何かの縁だなと思い、『3人主演でやりませんか』と提案し、物語を作り始めました」
―――「謝肉祭」というモチーフと「神様」を主人公にするという設定は、どのようにして発想されたのでしょうか?
「実は最初、10分から15分くらいの実験映画に近い完成形を思い描いていたのですが、構想を深めていくにつれて、物語の形になっていきました。とはいえ、初監督作品である『触れッドペリー』のタイトルが最初から決まっていたように、今回も“謝肉祭”という言葉は始めからキーコンセプトでした」
―――謝肉祭は、キリスト教圏のお祭り(カーニバル)を指す言葉ですね。
「原義はそうですね。一般的にはあまり耳慣れない言葉だと思います。私がこの言葉に出会ったのは小学生の頃、敬愛する萩尾望都さんの漫画(『メッシュ』)がきっかけでした。
それ以来、“謝肉祭”という言葉は、ずっと自分の中で引っ掛かっていたのですが、時を経て、3人を主演に映画を作るというタイミングで、ポンっと出てきた。思いついた途端、連絡をして『3人とも神様で謝肉祭をやりたい』と伝えたところ、『よくわからないけどやろう!』って言ってくれました(笑)」
―――イリエ監督はコピーライターとしても御活動されていますが、言葉を独自の回路でイメージに転換する、ユニークな個性がうかがい知れるエピソードです。
「私は色々な活動をしているので、『ナナコさんは言葉の人ですよね』と言われることもあれば、また別の人からは『映像の人ですよね』と言われる場合もあって、自分の中でも判然としないのですが、映画を発想する際は、毎回、一つの言葉とテーマカラーが思い浮かんで、それを起点に広げていくことが多いですね。
ちなみに、『触れッドペリー』のテーマカラーはブルーとピンクでしたが、『謝肉祭まで』は赤に近いオレンジでした」