漫画『私の見た未来』から読み解く本作の魅力
当然、ハナは「なぜ、私が世界を救うハメに…?」と困惑を隠せないわけだが、中盤では彼女が「決められた未来を変えられる能力を持った家系の者」であることが、老婆によって明らかにされる。
幼くして心臓病で余命の短かったハナ。そんな娘に対し、能力を持つ家系に生まれた母親は、夫の了承を得て、自分たちの命と引き換えに「世界の終わり」を防ぐ能力を持つハナを生き延びさせたのだ。その真実をハナは老婆から聞くこととなる…。
以上、大雑把ではあるが、あらすじを見てきた。ここからは考察に入ろう。
ハナの能力が真っ先に想起させるのは、東日本大震災を予言した漫画として近年話題を集めている、漫画家・たつき諒による漫画『私の見た未来』である。
同コミックは、作者が見た夢をそのままストーリーにしたものとなっており、震災が起こる12年前に発表された単行本の表紙には「大災害は2011年3月」と明記されている。上記の事実が明らかになると、一部のメディアでは、たつき氏の“夢”に未来を救うヒントを見出し、最悪の未来を避けるために今からできることを提言するような動きを見せた。
個人の夢を読解することに世界の存亡が関わる本作の劇構造は、『私の見た未来』および、同コミックが引き起こした騒動と重ね合わせることができるのだ。