夢と現実と入り混じるジェットコースターな展開
初監督作品『CASSHERN』では伊勢谷友介、2作目の『GOEMON』では江口洋介、3作目であり、ハリウッドデビュー作となった『ラスト・ナイツ』ではクライヴ・オーウェンを主演に迎えた紀里谷和明。男性を魅力的に、カッコよく撮ることにおいて人後に落ちない作家だが、本作では女性キャストに焦点が当てられている。
主演の伊東蒼は、終始、浮かない表情を浮べ、泣いてばかりいるが、時折見せる笑顔が抜群に魅力的だ。彼女は学校でいじめを受けており、お金がないゆえ、学校内ヒエラルキーが高いボス的ないじめっ子の女子高生(市川由衣)に援助交際を強要される。さらに、その現場の動画をネット上で拡散されるという陰湿極まりない仕打ちを受ける。
「こんな世界、無くなればいいのに」と叫ぶハルの姿は痛切極まりない。本作は、夢と現実が入り混じる、ジェットコースターのような展開を持つが「現実世界を描いたパートだけでも1本の映画として成立するのでは?」と思わせる、リアリティあふれる描写に息を呑む。このあたりのシーンは、本作にゲスト出演している岩井俊二監督の傑作『リリイ・シュシュのすべて』からの影響も強く感じさせるところだ。