「危険に見えなければ面白くない」スタントマンから転身。現役のアクション監督・園村健介、独占ロングインタビュー【前編】
映画監督とアクション監督のスリリングなやり取りを収めた、映画『シン・仮面ライダー』のドキュメンタリー番組が話題を集めている。同番組で初めてアクション監督の存在を知った方も多いのではないだろうか。今回は、公開中の映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』をはじめ、今まで30本以上の劇映画でアクション監督を務めてきた園村健介さんの独占インタビューをお届け。(取材・文:山田剛志)
【園村健介 プロフィール】
学生時代に倉田アクションクラブに入団、スタントの基礎を学ぶ。退団後、フリーの時期を経て2003年ユーデンフレームワークスに所属。数々の作品でスタントプレイヤーとして活動後『LOVE DEATH』(’06)にてアクション監督としてデビュー。その後は映画、TV、ゲーム等、幅広いジャンルでアクション監督として活動中。監督作品:『BAD CITY』(’23)、『HYDRA』(‘19)主な担当作品:『終末の探偵』(’22)、『生きててよかった』(’22)、『ベイビーわるきゅーれ』(’20)、ジョン・ウー監督作『マンハント』(’17)、ドラマ『コードネームミラージュ』(’17)、『ディストラクション・ベイビーズ』 (‘16)、『THE NEXTGENERATION パトレイバー』シリーズ(’14〜’15)、フルCG映画『バイオハザード』シリーズ(’08)(’12)(’17)等。
カット割りや効果音も担当
アクション監督のクリエイティブな仕事とは?
―――今回はアクション監督についてよく知らない方のために、具体的な仕事内容、存在意義について、園村さんご自身の経歴を踏まえ、映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(以下、『ベイビーわるきゅーれ2』)に触れつつ伺っていきたいと思います。
「アクション監督と聞いて、武道の先生のような存在を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。僕たちの仕事が、映画のクリエイティブな部分にどのくらい関わっているのか、よくご存知ではない方が大半だと思うので、このような機会をいただけて嬉しいです。よろしくお願いします」
―――園村さんはテレビドラマを含め、30本近くの映像作品でアクション監督を務める一方、アクションコーディネーターとしても数多くの作品に参加されています。アクション監督とアクションコーディネーターの違いとはどのようなものなのでしょうか?
「現場によってケースバイケースではあるのですが、一般的に、アクション監督はアクションシーンの動きを構想し、安全対策を講じつつ演出をつけていくのに加え、カット割りや効果音の演出・監修も行います。一方、アクションコーディネーターは、現場で演者にアクションを振り付けつつ安全面の対策をとるのが仕事です。
画面構成の考案や編集作業にタッチする権限があるのがアクション監督、現場で動きをつける作業に専念するのがアクションコーディネーター、という理解で大丈夫かと思います。
また、現場によっては分業制を採用する場合もあります。アクション監督の仕事は多岐に渡りますから、アクションをつけていく細かい作業はアクションコーディネーターに任せて、アクション監督が全体的な構成やカット割りに専念するというケースもあります」
―――『ベイビーわるきゅーれ2』はどのようなチーム編成でしたか?
「レギュラーメンバーは、私とアクションコーディネーター、補助スタッフの3人。大がかりなアクションシーンなどでは、必要に応じてスタッフを追加招集しました。現場に付きっ切りのスタッフを増やすとなるとその分コストもかかりますから、チーム編成は作品の予算規模に応じて様々ですね」
――― 園村さんが作品に携わる際、製作のどの段階で参加することが多いのでしょうか?
「アクションシーンを重視した作品の場合は、クランクインの半年前などに、余裕のあるスケジュールでお話をいただくことが多いですね。一方、アクションがそこまで重要ではない作品の場合、クランクイン直前の、脚本からロケ地まですでに固まっている状態でオファーをいただくことも、稀にですがあります。
ちなみに『ベイビーわるきゅーれ』シリーズには、主演の伊澤彩織さんから声をかけてもらい、企画が立ち上がってすぐの段階から参加しています。伊澤さんには、僕がアクション監督を務めた作品にスタントとして参加してもらったことがあり、元々知己があったんです」