美しいけど恐くない!?〜映像の魅力
本作は、舞台となる村の美しさも相まり、映像的には他のJホラー作品に類を見ないほどクオリティが高い。
例えば、かつての犬鳴村の記録映像は、フィルム特有の質感も相まって本物の記録映像と見まごうほどの仕上がりになっているのに加え、奏が犬鳴村の跡地を訪れるシーンでは、思わずハッとしてしまうカットが挟まれる。
また、奏が祖父の自宅を訪れるシーンでは、回想のシーンと現実のシーンをワンカットで映すなど、映像上の工夫も随所に見られる。
加えて、登場する幽霊もフィルムや写真特有のざらざらとした質感を纏っており、他のJホラーの作品にはない独自の表現になっている。このあたりも評価すべきポイントだろう。
しかし、この幽霊の描写が本当に怖いかというと、甚だ疑問だ。というのも、エフェクトが人工的なのに加え、はじめから幽霊の正体がバレてしまっているからだ。
『呪怨』しかり『リング』(1999年)しかり、「遠くで立っているだけ」の存在が徐々に近づいてくるから恐ろしいのであり、はじめから大っぴらになっていても何も怖くない。
そういう意味では本作は、むしろホラー映画というよりはゾンビ映画というのがふさわしいのかもしれない。