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強さが滲む圧巻のラストシーン

©2022 映画波紋フィルムパートナーズ

修の死後、物語は急展開を見せ、衝撃的なラストシーンを迎える。ネタバレになるので詳述は避けるが、不寛容な性格や差別心を持つ人間の本性をさらけ出すだけでなく、それらを乗り越えた強さが滲む圧巻の場面となっている。

原発に始まり、新興宗教、老老介護、貧困、障害者差別といった多様な社会的テーマを果敢に取り上げ、それでも、この世の中に一縷の希望を託す荻上監督の心意気が見える。

そして何よりも、依子を演じた筒井真理子の凄み溢れる演技は、観る者の心を動かすだろう。好演という言葉ではなく、“狂演”と形容したくなる、見事な憑依ぶりは必見だ。

修が去った須藤家のリビングからは、新興宗教の神棚は消え、修の遺骨が仏壇に置かれている。しかし、依子が緑命会を脱会したのかどうかは明確に示されてはいない。

その後、残された依子と拓哉の母子関係はこの後どうなっていくのか、思いを巡らせざるを得ない。

そして一方で、世の中に不条理が存在する限り、支え合う人間関係が希薄になっている現状から、新興宗教はその隙を突くように、あらゆる形で生き残っていくのだろう。人間とは、何かにすがって生きていくしかない生き物なのだから。

(文・寺島武志)

2023年5月26日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

【作品情報】

【出演者】
筒井真理子
光石研
磯村勇斗 / 安藤玉恵 江口のりこ 平岩紙
津田絵理奈 花王おさむ
柄本明 / 木野花 キムラ緑子
【監督・脚本】 荻上直子
配給:ショウゲート
©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
公式サイト

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