山村と露伴の類似はただの偶然か…本作の最大の謎は? 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、全トリックを解説&考察
text by ZAKKY
『ジョジョの奇妙な冒険』の人気キャラ・岸辺露伴を主人公とした漫画『岸辺露伴は動かない』シリーズ。2020年からドラマ化されている同シリーズの劇場版となる『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開中だ。高橋一生、長尾謙杜ら豪華キャストが集結。今回は、原作との違いに着目して、ネタバレありで魅力を深掘りする。(文・ZAKKY)
フランスのルーヴル美術館が舞台
『岸辺露伴』って、そもそも何者?
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の原作漫画は、フランスのルーヴル美術館と、Futuropolis社が実施する、世界的漫画プロジェクト「バンド・デシネプロジェクト」の一作として発表された作品である。
世界中の漫画家がルーヴル美術館に集まり、同美術館をテーマにした作品を自由に制作するという趣旨を持つプロジェクトにおいて、原作者・荒木飛呂彦は日本人唯一の作家として選出された。
ドラマ版では、原作ファンとしても知られる俳優の高橋一生が、アクの強いキャラクターである岸辺露伴という難役を見事に演じ、原作ファンから賞賛を集めた。
岸辺露伴は人を「本」にしてその人物の「人生」を読み解くことができ、さらに、本と化した人物に「~~ができる」「~~の過去はない」などと書き込むことにより、その人間をある種、操作する能力を持つ、天才漫画家である。
『岸辺露伴』シリーズの原作はすべて短編であり、60分弱のドラマシリーズとしては最適なボリュームである。本作の原作漫画も短編作品だ。
原作は大きく分けて、①岸辺露伴の青年期のパート、②大人になった露伴が「この世で最も黒い絵」を求めてルーヴル美術館に足を運ぶパート、③ルーヴル美術館内で巻き起こる奇妙な出来事、という3つのブロックから構成されている。
上記の構成を持つ短編漫画を、どのようにして118分の長編映画に仕立て上げたのだろうか。制作陣は、原作にはない2つのパートを新しく追加し、計5つのブロックで物語を構成している。
次のページからは、ストーリーの内容と魅力をひも解きつつ、原作との相違点や映画オリジナルの描写を、ブロックごとに深掘り解説していこう。