山村仁左右衛門と奈々瀬の秘密
原作ではエピローグとして、山村仁左右衛門の晩年のエピソードが登場するのだが、映画版の後半では、同エピソードががっつりと描かれている。これは最大の改変ポイントだろう。このシーンでは、なんと、高橋一生が、晩年の山村仁左右衛門を演じている。高橋は、岸辺露伴と晩年の山村仁左右衛門の1人2役をこなしているのだ。
そして、露伴の青年期において奈々瀬が発した、「あなたは似ている」という謎めいたセリフが、ここにきて意味をなしてくる。そう、奈々瀬は、山村仁左右衛門のかつての妻であり、露伴は生前の山村に似ていたのである。そして、「最も黒い絵」に描かれていた黒髪の女性は、奈々瀬がモデルであった。
奈々瀬はかつて、神仏の傍らに聳え立つ御神木から湧き出る樹液を、お参りの最中に偶然発見する。その樹液を、山村が求める「最も黒い顔料」として勧める。その樹液に魅了された山村は、顔料として使うことを即決。奈々瀬をモデルとした女性の絵を描くのだが、御神木に手を出したことで、冒涜者として告発され、藩から拷問を受ける。