ラストに残る大きな謎
原作では、山村自身が樹液を見つけ、処刑をされ、奈々瀬は悲しみのあまり病死したというエピソードが簡潔に説明される。
しかし、映画版では、山村は拷問の末、自宅にて怨念を込めながら絵を描き、息絶える。奈々瀬が、いつ死亡したのかは不明だ。よって、奈々瀬が現代の露伴の元に「時空を越えて来訪した生身の人間」であるのか、「亡霊」であるのかは、謎であり、制作陣は観客に解釈を委ねている。
原作ではこの後、露伴が帰国後に山村仁左右衛門のことを調べた際に、衝撃の事実が明らかにされる。それは、奈々瀬の旧姓が「岸辺」だということだ。
上記の事実は、原作ではさらっと明らかにされるが、映画版では工夫がこらされている。奈々瀬は現代の御神木を訪れた露伴の前に再び現われ、露伴は彼女に「ヘブンズドアー」を発動し、彼女の人生を読み取ると、旧姓は「岸辺」だということが判明するのだ。「ヘブンズドアー」という能力の見せ場を最後の重要な場面に持ってくる、制作陣の腕が光る、ニクい演出である。