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「この映画に携われたことを誇りに思います」
主演・花瀬琴音が感極まって涙

メインのロケ地、沖縄市のシネマプラザハウスで9日に行われた舞台挨拶のチケットは売り出し開始後早々にソールドアウトとなり、その勢いのまま沖縄のメイン館となる那覇・おもろまちのシネマQで6月10日に主演の花瀬琴音、沖縄キャストを代表してヒロインのおばぁを演じた吉田妙子、そして工藤将亮監督が本編上映後に登壇、満席の観客に熱く温かい拍手と歓声に出迎えられた。

4月の第15回沖縄国際映画祭以来の沖縄となる花瀬は「撮影をしていたのが2年前。アオイとして生きていた沖縄に帰ってこれて、懐かしい気持ちと、撮影中の温かった皆様の事も思い出して、感無量です。」と観客への感謝を語った。

主演の花瀬琴音
主演の花瀬琴音

沖縄を代表する俳優である吉田妙子は出演の理由を尋ねられると「工藤監督が沖縄の状況をよく分かっていて、皆に知らせようと、貧困をなくそうとの意気込みが脚本から感じられました。沖縄の監督だったら遠慮してしまったのかもしれない。(私は)戦争で命が助かってここまで生きて(左から吉田妙子、花瀬琴音、工藤将亮監督) きて、ここで自分も何かお役に立ちたいと思い参加させていただいた。出演できて嬉しく思っています。」と語った。

おばぁ役の吉田妙子
おばぁ役の吉田妙子

そして工藤監督は「妙子さんにそういってもらえて嬉しいです。おばぁ役だけはどうしても、うちなんちゅのおばぁでないとダメだと思っていた。」と吉田に語りながら、今の想いを「自分は内地の人間なので、映画を沖縄の人に見せるのは怖かった。でも今大きな拍手をいただいて安心しました。僕の母も育ててくれたおばぁもシングルマザーでした。ですのでこういう状況を知って、出てくる少女たちが自分のことのように感じこの作品を作りたいと思いました。」と感謝の弁とともに述べた。

工藤将亮監督
工藤将亮監督

オーディションでアオイ役をつかんだ花瀬は、「オーディションを受けたときはここまで辛いと思ってなくて、役作り期間を通して責任感というか、準備期間1カ月沖縄に住んでいる間にアオイとしての重みを感じていった。沖縄のことばを覚えるのが大変でコザのパークアベニューで公開ラジオを聞いたりとか、人とたくさん話をしたりしました。」と語った。

『遠いところ』 は自分にとってどんな作品になったか?という問いに対し、花瀬は「実際にアオイの家になっていた場所に1カ月間撮影前に準備期間として住ませていただいて、役との向き合い方、想いの込め方をこの作品に教えてもらいました。人間としても強く生きることの一生懸命さ、必死に生きているアオイの姿に女優としても人間としても成長させてもらい、大切な作品となりました。」と語りった。

工藤監督は「『遠いところ』というタイトルですが、決して遠いところの話ではないと思っています。この映画を海外で上映した時も東京で上映した時も、自分の事のように受け取ってくださる方がいました。ドイツの児童相談所の方がどうしたら解決できるのかと同じ悩みを口にされていました。劇中での言葉も実際に聞いた言葉や、児童相談所の職員の方たちから聞いたエピソードをそのまま脚本に反映しています。知っているんだけれど知らないという状況があります。僕がそうだったので、こういう子たちにフォーカスを当ててもらって、ご家族やパートナーにこの映画の話ししてもらえればと思います。」と語った。

最後に、この作品を通して伝えたい想いを聞かれた花瀬は、「皆さんの顔を見ていると、ハンカチで涙を拭いてらっしゃったり泣かれたんだなというお顔が見えて…。自分も経験したことはないことばかりですが、準備中にたくさんお話を聞かせてくださった方々とアオイを通して辛さを知っていたので、この映画を観て苦しんで人がいることを知って、またなにかしようと感じていただけている涙なのかなと思うと、この映画に携われたことを誇りに思います。」と涙で詰まりながらも懸命に言葉を紡いだ。

吉田は「沖縄の深刻な貧困問題を私も何年前かに知った。沖縄から貧困をなくして、子供たちが普通の暮らしをできるようになって欲しいと思っています。お願いいたします。」と語り、工藤監督は、「人を変えることは無理だけれど、自分を変えることはできるので、この映画を観て、少しでもいろいろな会話の中にこの問題について話してもらえると、映画にとっては一番だと思います。」と語り、観客の中には涙を流す人も見られ、場内は大きな拍手で包まれて、舞台挨拶は終了した。

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